第6回:FinTechで若者の投資マインドが変わる? その理由は:今さら聞けない「FinTech」の基礎知識
海外で人気を博している投資分野のFinTechサービス。“現金・預金の国、日本”で、この分野の成長は見込めるのだろうか。
送金、決済、融資など、さまざまな分野のサービスが登場しているFinTechだが、米国では今、投資サービスも注目を集めているという。
ロボアドバイザーの技術でポートフォリオ作成や投資運用の提案を行う、ポートフォリオアドバイスサービスや、本連載の第2回で紹介したP2Pを応用した融資型プラットフォーム(お金の貸し手はリスク許容度と運用利回りから分散投資を行える)などである。
投資ポートフォリオアドバイスのサービスでは、米Bettermentや米Wealthfrontなどが代表的なところである。日本でも「お金のデザイン」や「ウェルスナビ」といったサービスが登場している。
こうした投資系FinTechサービスが日本でも広がる可能性を考えるにあたって、海外先進国と日本の家計資産構成の違いをみていこう。
FinTechは“現金・預金の国、日本”を変えられるのか
日本は、米国やユーロエリアと比べて圧倒的に「現金・預金」が多く、債券・投資信託・株式といった「投資」商品の利用が少ないことが分かる。海外で見られる投資助言型のFinTechサービスは、資産を保有する人や、資産を形成していこうとする人々が、「投資を任せられるサービスを自ら選ぶ」ことが大前提となるが、日本においてそうした環境が整っているのだろうか?
日本で多額の個人資産を保有しているのは主に高齢者層であり、その傾向は「元本リスクに極めてセンシティブなタイプ」「“銀行や証券会社が勧めてくれるのであれば安心”という金融機関信頼型タイプ」「自己の相場観に基づいて大胆に投資を行うタイプ」に大別される。また、「投資を任せる」という観点では、ラップ口座のような商品もあるが、主に超富裕層向けであり、「証券会社が勧めてくれるから利用する」という側面が強い。
こうした背景を考えると、自分で投資サービスを選び、それに任せていくようになるには、多少時間がかかるかもしれない。
しかし、そもそも投資の主な担い手が高齢者という状態の中、スマホやPCをユーザーが操作しなければならない投資サービスは、広がっていく可能性があるのだろうか? 筆者は、実はこのスマホを使う、という点がカギだと考えている。
若者層の取り込みがカギに?
スマホの主なユーザーである若年層は、将来の結婚や住宅購入、教育などに向けて資産を「形成」していく層であるが、こうした層に向けた小額投資のサービスが日本で身近な存在となる可能性は十分あると思っている。長年の低金利を受けて、資産形成においてはこれまで以上に投資の重要性が増してきているが、若年層がいきなり債券・投資信託・株式を購入するというのは、心理的にも金銭的にもハードルが高いだろう。
資産形成に大切なのは、投資か預金かの二択ではなく、まずは“コツコツお金を分けておくこと”だと考えると、FinTechサービスは日常生活の中で定期的に(=積み立て)、あるいは一定のルールで習慣的に(=5百円玉貯金)投資を行う習慣を多くの人が身につけるきっかけとなるかもしれない。
海外ではこうしたサービスとして、「米Acorns」や「米Digit」といった小額投資のプラットフォームが注目され始めている。日本でも、まだサービスリリースはされていないが、2015年末に福岡銀行が発表した「iBank(仮称)」は、日常の買い物時のキャッシュレス決済に加え、日々の収支管理や目的別預金ができるなど「銀行ならではの新しい貯蓄体験を提供する」ツールとして注目されるところである。
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