英国のEU離脱問題から考えるビッグデータの管理:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/4 ページ)
2016年6月23日(現地時間)に実施された英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票(Brexit)の結果は、日本を含むグローバル企業におけるビッグデータの運用管理にどのような影響を及ぼすのだろうか。
サイバーセキュリティへの懸念
個人データ保護規則と並んでEUが共通化・標準化に取り組む政策に、サイバーセキュリティがある。サイバーセキュリティに関する経緯をは下表に示す。
EUのサイバーセキュリティ対策は、政府直轄の独立組織が所管するケース、情報通信当局が所管するケース、国防当局が所管しているケースなど、まちまちだ。そこでミニマム・スタンダードとなるEU共通のサイバーセキュリティ戦略やネットワーク・情報セキュリティ指令(=EUサイバーセキュリティ指令)などをもとに、各国政府が個別にポリシーや組織を整備しながら、技術的対策の導入を図る形態をとっている。
英国はサイバーセキュリティ先進国であり、事業継続管理に代表される緊急対応組織体制やセキュリティ技術の研究開発の分野では、EU域内におけるハブとしての役割を果たしてきた。EU全体のサイバーセキュリティ投資に占める英国のプレゼンスも大きく、EU離脱によって他の加盟国との結びつきが弱まれば、マイナス要因となりかねない。
欧州で事業を展開する企業は今後、EU個人データ保護規則に加えて、EUサイバーセキュリティ指令への対応にも迫られる。EUを標的にしたテロやサイバー攻撃が急増する中、米国と同等レベルのサイバーセキュリティインシデント対応・情報共有組織を整備することが企業における事業継続の前提条件となるだろう。
とりわけ、重要インフラ事業者(金融、運輸、電力、保健医療)やオンラインサービス提供者(eコマースプラットフォーム、オンライン決済、クラウド事業者、検索エンジン、SNS)に対しては、リスクベースのマネジメントアプローチや、基幹サービスのインシデント報告が要求事項になっているので、迅速な対応が必要だ。
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