英国のEU離脱問題から考えるビッグデータの管理:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(4/4 ページ)
2016年6月23日(現地時間)に実施された英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票(Brexit)の結果は、日本を含むグローバル企業におけるビッグデータの運用管理にどのような影響を及ぼすのだろうか。
インパクトが大きい知財ビッグデータの管理
ビッグデータの中でも、資産価値の高いものが知的財産権に関わるデータだ。英国では、ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)傘下の知的財産庁が、特許、商標・意匠、著作権など、知的財産権に関わる業務を一元的に所管している。
特許に関して欧州レベルでは、欧州特許条約(EPC)に基づいてEUとは独立した機関である欧州特許庁(EPO、ドイツ・ミュンヘンに本部)が所管している。商標・意匠に関しては、EUの専門組織である欧州連合知的財産庁(EUIPO、スペイン・アリカンテに本部)が所管する。他方で著作権に関しては、関連するEU指令※をミニマム・スタンダードとしつつ、各国の政府機関が個別に所管している。
※例えば、コンピュータープログラムの法的保護に関する指令、知的財産分野における有償・無償の貸与権および著作隣接権に関する指令、情報社会における著作権と著作隣接権の一定の側面の調和に関する指令、データベースの法的保護に関する指令、著作権集中管理指令、EU域内における著作権保護期間の調和に関する指令など。
英国がEUを正式に離脱した場合、特許について他のEU加盟国との関係は従来と変わらないが、商標・意匠についてはEUIPOから離脱してEUとの関係を再構築することになり、影響は大きい。
他方で著作権については、英国がEU指令をミニマム・スタンダードとして順守する必要がなくなるものの、それを前提として個別の仕組みを構築・維持する各EU加盟国との協調政策の方向性に左右されることになる。いずれにせよ、データマネジメントが複雑化する点は避けられそうにない。
英国は、FinTech(金融×IT)のシティ、MedTech(医療×IT)のカナリーワーフなど、イノベーションによる成長が期待されるクラスタを多く抱えている。その資産価値は、同国の国土や人口規模を超えるレベルだ。EUからの離脱により、とりわけ今後の無形資産を牽引するビッグデータやエンジニアの集積する産業が移転したら、その影響はサーバやストレージなどの物量的なものだけに留まらない。
次回は、日本の改正個人情報保護法で課題にもなっているビッグデータの匿名化技術を取り上げる。
著者者紹介:笹原英司(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身、千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所などでビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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日本クラウドセキュリティアライアンス ビッグデータユーザーワーキンググループ:
http://www.cloudsecurityalliance.jp/bigdata_wg.html
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