IoTがシニアの健康寿命を延ばす? 富山の“歩きたくなる街作り”を支えるIT(1/2 ページ)
少子高齢化が急速に進む日本で今、深刻化しているシニアの健康問題。この課題をIoTで解決しようとしているのが富山市だ。富山の“歩きたくなる街作り”にITはどう貢献しているのか。
少子高齢化が急速に進む日本で今、深刻化しているのがシニアの健康問題だ。世界でもトップレベルの平均寿命を誇る日本だが、自立した生活が可能な「健康寿命」となると、平均寿命を10歳も下回っているのが現状。政府もこの状況を問題視しており、健康寿命を延ばすためのさまざまな取り組みを行っている。
こうした中、元気な高齢者も足腰が弱ってきた高齢者も、もっと街に出かけて散歩や交流を楽しみながら健康寿命を延ばそう、と取り組む都市がある。豊かな自然に囲まれた北陸の地方都市、富山市だ。
富山市では、ともすれば家に引きこもりがちな高齢者が、“街に行ってみよう”と思うような施策を次々と打ち出している。「孫と一緒に観光施設を訪れると入園料無料」「花束を持って路面電車に乗ると運賃無料」「バスで街の中心部まで来ると周辺で降りるより料金が安くなる」など、街歩きを楽しむための工夫がめじろおしだ。
中でも、ひときわ目立っているのが高齢者の歩行を助けるシルバーカー「まちなかカート」のシェアサービス。シルバーカーは、足腰が弱ったシニアの歩行を支援する車輪付きのカートのことで、これを使うと足腰に過度な負担をかけることなく歩くことができる。買い物用のカートとしても使えるため、利用者が増えているという。
このまちなかカートの活用やシェアサービスの推進に取り組んでいるのが、富山大学と富山市、市内の長寿会、地元商店街らによる「富山大学歩行圏コミュニティー研究会」(通称:ホコケン)。街歩きを楽しむ誰もがまちなかカートを使えるよう市内数カ所にシェアステーションを設置し、使いたいときに、すぐ持ち出して使える環境を整備した。「街まで出てくれば(好きなときにカートを使えるので)、街歩きで疲れることはない」(富山市長の森雅志氏)というわけだ。
街歩きに適したオリジナルのまちなかカートも開発しており、地元の三協アルミの協力を得て、おしゃれなデザインのまちなかカートを開発。これを押してさっそうと歩く男性も増えているという。
こうした取り組みが奏功し、富山市では4年連続で要介護認定率が横ばいで推移。2015年には0.02%下がるという結果につながった。「体が弱ってしまった人を元気にするのは簡単ではないですが、要介護認定を受けている人の割合を下げていくことは可能だと思っています」――。こう話すのは富山市長の森雅志氏だ。
「外出しないと足が動かなくなり、足が動かないと家にこもって人と話をしなくなる。そして、それが認知症につながるんです。この連鎖を断ち切るために、どうやって外出を誘導するのか。さまざまな仕掛けをしているところです」(同)
IoTでまちなかカートの稼働状況を可視化
シニアに人気のまちなかカートだが、現状では“どこでどのように使われているのか”は把握できていない。それを可視化しようというプロジェクトが、この夏始まった。その名は「ホコケンIoTプロジェクト」。この取り組みは、カートにタブレット端末やセンサーを装着して各カートの移動距離や時間、速度データを取得し、それを分析しようというものだ。
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