AIは人を単純作業から解放し、創造性を引き出す存在に――NEC新野社長:人間の“協働”で社会課題を解決(2/2 ページ)
NECの年次カンファレンス「iEXPO KANSAI 2016」で新野社長が講演。人工知能は人間を単純労働から解放し、ポテンシャルを引き出す存在になると述べ、さまざまな導入事例を紹介した。人工知能と人間が協力することで、さまざまな社会課題を解決できるというのが、同社のスタンスだ。
AIを“守る”のも、AIの仕事に
AIの活用事例は次々と出てきているが、AIが生み出す新たな価値を守るために必要なのが“セキュリティ”だという。「1カ所でもセキュリティに不備があると、AIが生み出すバリューチェーン全体が脅かされる」(新野社長)ためだ。そして、そのセキュリティを守るのもまた、AIなのだ。
「NECは古くからセキュリティの技術開発を進めていますが、この領域でも、AIを活用した自己学習型のシステムを開発しました。通常のシステムは攻撃を受けた後、攻撃の種類を分析して対処するのですが、この技術では、システムの“正常”な状態を学習しておき、異常な動きを検知したら直ちにネットワークを遮断する仕組みを採用しています。これによって、未知の攻撃や予想外の故障にも対処できるわけです」(新野社長)
犯罪防止やスマートシティ、農作物の需給予測など、AIやIoTといった新技術は、新たなシステムやビジネスが次々と生む可能性を持つ一方で、「AIが人間を追い越し、さまざまな仕事が無くなってしまうのではないか」と危惧する見方も根強い。しかし、新野社長は決してそんな事態にはならないと断言する。
「AIの技術が発達しても、人間が判断する必要性は残るでしょう。芸術の活動などAIだけではできないことも多々あります。今後、AIは人の創造性や幸福感を引き出す役割を担うと考えているのです」(新野社長)
データを可視化し、事象を予測し、制御する――人工知能の“英知”がどう人間と関わっていくのか。さまざまな実績を積み上げていくことが、社会に人工知能が真に受け入れられるカギになるのだろう。
(取材協力:NEC)
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