第14回 企業規模でみるシステム運用管理のアウトソーシング方法:データで戦う企業のためのIT処方箋(1/2 ページ)
ITシステムをMSPへアウトソースする際に、IT部門が考慮しなければならない点はたくさんあります。今回は自社の規模という視点からMSPに対するアプローチの方法を紹介します。
中小企業と大企業の間では、会社の規模に応じたITシステム規模の大小の違いだけでなく、ITシステムの選定、採用や運用方法にも違いがあります。アウトソースの方針を決めるアプローチ方法も同様で、大企業と中小企業では取り得る方策が違います。まずは、中小企業での適切なアプローチから説明します。
※前回の記事はこちら
中小企業でのアプローチ
SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)や個人事業主など、非常に小規模な企業を除いて、一般的な企業では複数の業務システムが稼働しています。
標準化にあたって手を付ける順序に特別な決まりはなく、前回ご紹介したように、手を付けられるところから初めてよいでしょう。ただし、中小企業はシステム数が少なくても、IT担当者も少ないことが一般的です。途中で日々の業務の負荷が大きくなって作業に遅れが発生したり、動きが取れなくなることも往々にしてあります。
このように少ないリソースで標準化を進めるには、SLAやアーキテクチャといった方針が必要です。この連載の第1回で紹介したデータ種別の分類をもとに、まずは一つのシステムやプロジェクトに注力してパターンを経験し、その後に他のデータについても同様に分類を進めていくことで、混乱を防ぎながら着実にプロジェクトを進められます。場合によっては、SIerや同業他社がもつベストプラクティスをそのまま参考にするのも方法です。
進め方のもう一つのアドバイスは「検討時間の制約」です。日々の業務や運用はなくなりませんので、あまり投資余力や担当者の対応時間に余裕がない状況も十分に考えられます。この場合はコストと時間のそれぞれの現状を見比べ、投資への制約が大きいなら「重要度から検討」し、時間への制約が大きいならば「手の付けやすいところから検討する」と、上申なども含めて比較的スムーズにいくことが多いようです。
重要度から検討する例を挙げると、製造業では設計や生産管理といった製品自身に関連する業務システム(重要度が高いもの)からスタートし、その後に販売管理や人事給与・経理といった業務システム(重要度が比較的低いもの)に落とし込んでいく、といった方法があります。
手を付けやすいところから検討する例では、逆に人事給与や社内情報システムといった利害関係の調整が社内だけで済む/少なくて済むものから始めることもあります。こうすることで、後回しが多発したり、検討しても何も決まらなかったりといった状況を極力少なくすることができます。
大企業よりシビアな経営環境にある中小企業では、しばしIT投資が後回しにされてしまいます。しかし、新しい技術を導入したり、何らかの変更を加えたりするという検討は一時的に負荷が高い業務ですが、後回しにすればするほど、現行の運用と新しい運用の間に大きなギャップができてしまい、さらに対応が難しくなります。
投資を後回しにするということは、業務効率を改善できないといった「プラスになるものの実装が遅くなる」だけでなく、「将来のIT変更に対するリスクを高める」というデメリットも伴います。コストの抑制、または削減と同時にリスクについても選択していることをきちんと認識すべきです。
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