第15回 これからクラウド導入する際の注意点、お金と使い方の関係:データで戦う企業のためのIT処方箋(1/3 ページ)
「使うIT」の代表がクラウドです。AWSやAzureなどさまざまな事業者がサービスを提供していますが、どうやって選ぶとよいのでしょうか。今回はデータが増え続ける中で、「持つIT」と違うところや注意すべきところ、選定時のキーポイントを説明します。
企業がITインフラを検討する際、「クラウドファースト」と「使うIT」を検討することが一般的になりました。クラウドでは、Amazon Web Service(AWS)やMicrosoft Azureなど大手の他にもさまざまなクラウドサービスプロバイダー(CSP)がサービスを展開しています。
今回は「持つIT」との比較として、第13回で紹介したクラウドとして提供されるサービスの中でもIaaSを利用すると、データを扱う基盤としてどう違うのか、どこに気を付けないといけないのかを説明します。なお、特定用途となるPaaSやSaaSといった機能を提供するクラウドの場合は、比較対象がアプリケーションになりますので、本稿では扱いません。
「クラウド=安い」では(必ずしも)ない
ユーザー企業の方と話をしていると、クラウドを検討するときに「安い」というイメージが先行していることがよくあります。実際には、「持つIT」としてオンプレミスで購入する時と同じで、単に「コストが安い」ということは必ずしも正しくはありません。正確には、「コストパフォーマンスがよい」ということになります。
この「コストパフォーマンスがよい」とは、どういうことでしょうか。まずは、ITインフラのリソースの面から説明します。
例えば、購入する場合と比べたメリットに、「使った分だけ払う」があります。サーバ(CPU)であれば、起動している時間分だけ払えばよく、シャットダウンしたら費用は掛かりません。ディスクについても、使っている容量分だけ払えばよく、ディスク装置全体を支払う必要はありません。不要なら削除をすれば、費用は掛かりません。
これは同じ月額支払いになるリースとは異なり、使っていなければ払う必要がないわけですから、ムダがなくせるという面ではコストを安くできると言えます。また、必要なCPUやメモリ、ディスク容量といった構成の変更が自由に、作業費用といった追加コスト無く実現できることも、クラウドのメリットになります。
その一方で、購入する場合にはあまり意識しない点で注意が必要になるものもあります。例えば、常時稼働が前提のシステムなら、購入する場合は電気代と空調代程度のものではありますが、クラウドではCPUなどの費用が継続してかかります。この場合、使い方や規模にもよりますが、通常のサーバを購入した場合と比べて、2年〜4年程度で支払い総額が上回ることもよくあり、「結果的に安くない」ということがあります。
また、ネットワークを介した通信量への課金にも注意が必要です。一般的なクラウドでは、クラウド上の同一テナント内部での通信には費用がかかりませんが、外部との通信は別です。ある程度の規模のユーザー企業なら、全てのシステムをクラウドに置くことは必ずしも適切ではなく、オンプレミスとクラウドの併用が発生します。
この場合の通信費用は、どれだけのデータ量を送受信したか(クラウドによってはクラウドからの送信データ量のみに課金されるところもあります)になりますが、データの送受信量を意識するユーザー企業は少なく、この点は予算化や見積りが難しい理由になっています。
購入する場合でも、ネットワークスイッチなどの装置にかかる費用や回線費用など、実際には費用が掛かっていますので、これまでに全く支払っていなかったものではありません。ただ、社内での通信であれば設置以後はほぼ使い放題であったところが、クラウドでは考えないといけない、というわけです。
ですので、クラウドサービスは結果として「コストが安い」ということもありますが、対価を支払う以上、同じ使い方では同じ金額がかかるものとして、「単純に安いわけではない」と理解する必要があります。要は、「使うIT」にしていくほど、使い方ひとつで、コストや使い勝手が大きく変わるということです。
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