新入社員の“コミュ力”、どう鍛えればいい?:女子ヘルプデスク今昔物語 第10話(3/4 ページ)
「いいコミュニケーションってどんなもの?」を教える研修の時間がやってきた。個人的にコミュニケーションに正解はないと思っているんだけど、それでも教えなきゃいけない……。一体どう教えればいいんだろう?
新入社員A: それってまとめて“仕事のため”って言った僕は正解ってことですよね。
え!? 一気に自己陶酔から目覚める。ダメじゃない。「知ることが大事だ」と言っている私自身が、うまく喋れている自分に酔ってどうする。反省、反省。
私を現実に引き戻したのは、新入社員の“正解”ということば。長年ヘルプデスクをやって分かったのは「コミュニケーションの世界に、常に通用する正解はない」ということ。時と場合、そして相手によって「正解のようなもの」は全て違う。だからこそ「正解」という言葉に違和感があった。
結局、コミュニケーション研修の1日目は消化不良気味に終わった。今日は反省点が多い。そんな私の「危ないオーラ」が見えたのか、席に戻ると上司Aさんがすかさず声をかけてきた。この人、上司としては「デキる人」だよね、多分。オタクスイッチとムチャ振りスイッチさえ入らなきゃいい人なんだ。多分。
新入社員は“コミュ力”がないのか?
Aさん: 今日の研修、どうだった? 確か……。
わたし: コミュニケーション研修の1日目です。
Aさん: 新人たちの報告書は後で見るけれど、手応えとしてはどう?
わたし: んー。どうなんでしょう?
Aさん: 報告になってないなぁ。コミュニケーションの研修をしてきたところなんじゃないの?
痛いところを突かれた。
わたし: すみません。何でしょうかね……。
Aさん: では、質問を変えよう。新入社員は、コミュニケーションが下手なんだろうか。
わたし: そうは思いません。新入社員同士はうまくコミュニケーションがとれているようです。でも、ビジネスの現場におけるコミュニケーションに慣れてないって感じなんです。
Aさん: そりゃそうだろう。しかし、彼らの中のコミュニケーションと、ビジネスの世界とのコミュニケーションとは、何か違いがあると思う?
わたし: 多分……彼らの中のコミュニケーションは、同世代、同じ学校とか同じサークル、同じSNSを使っている仲間内でのコミュニケーションに限られているような気がします。一回りも二回りも年上の人とか、立場や価値観がまるで異なる人とのコミュニケーションはあまり経験がないような……。
Aさん: そう。共通の価値観、共通の文化の中でのコミュニケーションは、彼らは実にうまくとっていると思うよ。LINEを代表とするような新しいツールもふんだんに使ってね。
わたし: あ、そうですね。
Aさん: でも、年齢層や価値観、文化、経験などが大きく異なる人とのコミュニケーションは、確かに慣れてないかもね。それに、電話やメールによるコミュニケーションや、敬語を適切に使ったコミュニケーションにも慣れてない。
わたし: 確かに。
Aさん: ポイントは2つあると思うよ。
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