ITインフラ刷新で“お役所”の紙文化を崩せるか? 文科省の挑戦:運用管理コストも削減(2/3 ページ)
官公庁の中でも積極的にワークスタイル改革に取り組む文部科学省は、2017年1月に向けてITインフラを刷新している。“レガシー”な現行システムを変えることで、一体何ができるのか。情報システムと人事それぞれの担当者に聞いた。
シンクラ導入による業務効率化、ペーパーレスにも寄与
そして仮にPCを会議室に持ち込んだとしても、無線LANがないため、ネットワークに接続するには、床からLANケーブルを引っ張り出なさければならない。こうした煩雑な作業があるため、文科省内でPCを持ち歩く職員は少なかったという。
ローカルに情報を保存しないシンクライアントであれば、紛失や盗難によるリスクが下がり、PCをワイヤーで固定する必要はなくなる。さらに各会議室に無線LANを整備するとのことで、職員のみの少人数での打ち合わせから、職員以外も含めた大人数の会議に至るまで会議にPCを持ち込むスタイルが今後普及することになりそうだ。これにより、資料の印刷に使っていた時間や紙の削減が期待できる。
また、出張や在宅勤務でPCを持ち出す際は、共有の持ち出し専用端末を借りる必要があり、設定に時間を要することから、なおかつ2日前までに申請しなければならなかった。
「緊急で貸し出す必要がある場合は、その作業を優先させますが、通常は2日前までに申請が必要です。そのため“明日から急な出張が……”といった状況になかなか対応しづらく、ユーザーの利便性を損ねていた面は否めません」(大臣官房政策課 情報システム企画室 情報基盤係 穗積勇起氏)
仮想デスクトップの導入により、外部に持ち出す際にも自席の端末をそのまま利用できるようになる。申請手続きや専用端末の準備作業の手間を削減できるほか、職員のワークスタイル改革にも寄与できるという。
基盤の刷新に合わせて、スケジューラーやコラボレーションツールも一新するとのことで、Webカメラを使った遠隔地とのビデオ会議も容易になる。
サーバなどの仮想化で、運用管理コストの削減も期待できる。特に昨今は各PCのOSにパッチを当てたり、各種機器からのウイルス検知のアラートに対応したりといった、セキュリティ対策のための業務負荷が高まっているが、仮想化したサーバにセキュリティ機能や運用システムを集約し、端末の集中管理を行うことで運用管理業務を集約できるという。情報システム担当者のワークライフバランスも改善されそうだ。
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