ITインフラ刷新で“お役所”の紙文化を崩せるか? 文科省の挑戦:運用管理コストも削減(3/3 ページ)
官公庁の中でも積極的にワークスタイル改革に取り組む文部科学省は、2017年1月に向けてITインフラを刷新している。“レガシー”な現行システムを変えることで、一体何ができるのか。情報システムと人事それぞれの担当者に聞いた。
システムの刷新は“紙文化”を崩せるか?
もちろん、ツールやシステムを変えたからといって、ワークスタイルが一気に変わるわけではない。
大臣官房人事課の玉城直氏によれば、女性活躍やワークライフバランスの観点から政府全体でテレワークの推進に取り組んでいるが、2015年度における文科省の実績は、約2800人の職員のうちテレワーク実施者が68人。先に挙げたPCの事前設定に時間がかかるという問題のほかにも、持ち出し用端末の台数との兼ね合いや、人事課での承認手続きなどに時間がかかるという状況もあるそうだ。
「クライアント端末が変われば、持ち出し用端末を貸し出す台数の調整を行う必要がなくなり、より柔軟な利用が見込めます。併せて、テレワークの運用ルールも再検討の余地があるでしょう。そういったことも踏まえ、2016年度は昨年度以上の数字を上げるという目標を掲げています。その結果を基に、2017年度以降の計画や目標を検討していく予定です」(玉城氏)
ペーパーレス会議については、文部科学大臣の諮問委員会である「中央教育審議会」において実践することが決定している。1〜2カ月に1回のペースで開かれるこの会議は、政府の審議会の中でも、最も紙資料が多いといわれており、資料の説明だけで会議時間の多くを消費してしまうケースもあるそうだ。
「基本的には、会議の前に外部委員のBYOD端末に資料をダウンロードしていただく運用を考えています。会議後に回収が必要な資料もあるので、一部紙の資料は残るでしょう。委員の希望によりタブレット端末を貸し出す用意もしていますが、相手あっての話なので、紙にしてほしいと言われれば対応するケースもあると思います。とはいえ、機は熟し始めていると感じているので、あとはユーザー目線に立って使いやすいシステムを入れることで、だんだんと理解が得られるのではないでしょうか」(大臣官房政策課 情報システム企画室 情報基盤係長 木村修平氏)
中央教育審議会など、外部の委員が多数出席するような会議で一気に紙の資料をゼロにするのは難しいが、省内の会議から徐々に広げていく構えだ。資料の内容によっては、タブレットよりも大きなサイズの紙に印刷したほうがいい場合もある。旧来から紙文化だった“役所”の仕事を変えるのは、時間とエネルギーが必要だろう。
システムの刷新にかかる費用は税金だと考えると、一般的な企業と同じくシステム刷新の費用対効果はシビアに判断される。文部科学省の場合は、ITインフラの仮想化でコストを減らしつつ、セキュリティ対策やワークスタイル改革を充実させた好例といえそうだ。ITの力で“紙文化”を変えられるのか。今後の動きにも注目だ。
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