複雑化するハイブリッドクラウド時代の運用管理、解決策は:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業のIT基盤としてハイブリッドクラウドが注目を集めているが、統合運用管理の複雑化が課題となっている。この問題に解決策はあるのか。
顧客調査に見るハイブリッドクラウドへの要望
「もし、企業のシステムが一斉にパブリッククラウドへ移行するならば、当社にはお客さまから声が掛からなくなるのではないかと危惧した時期もあった」
こう語ったのは、会見で説明に立ったネットワンシステムズの松本陽一 市場開発本部長である。しかし、実際にはパブリッククラウドが注目されるにつれ、まずはオンプレミスと接続してハイブリッドクラウドとして有効活用したいとの要望が同社に多く寄せられたという。
そこで顧客にヒアリング調査を行ったところ、具体的な要望として「マルチクラウドとの閉域網接続」「Microsoft Office 365の利用」「インターネットセキュリティ対策」「ネットワーク機能のサービス利用」といった点が浮き彫りになった。つまりは、これらがハイブリッドクラウドにおける課題である。
また、ハイブリッドクラウドの実現に向けて、「お客さまの93%はクラウド活用に向けた次世代ネットワークのグランドデザインを検討している」「お客さまの83%はSaaSも含めたマルチクラウドの活用とデータセンターの在り方について検討している」といったことも明らかになった。松本氏によると、こうした顧客の声をもとに商品化したのが、クラウドHUBサービスなのである。
同サービスは、各クラウドとの専用線を持つデータセンター内に新しいネットワーク接続点(クラウドHUB)を設けることで、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Office 365をはじめとしたマルチクラウドとの閉域網接続機能およびWANやインターネットとの接続機能を提供するというものである。
さらに、セキュリティ機能として、最新のファイアウォールやIDS・IPS、認証、マルウェア検出、プロキシ、ログ収集・分析などを提供。セキュアな環境でのコロケーション機能も備えることで、顧客の個別の要望にも対応可能な環境を提供するとしている。(図2参照)
このサービスを導入することにより、最新のセキュリティと統一したポリシーの下で複数のクラウドへの閉域網接続を実現できるとともに、月額サービスのためクラウドの利用量増減に応じて帯域幅を柔軟に調整可能で、セキュリティアップデートの運用負荷も削減できるという。
同社ではこのサービスによって、「クラウド事業者は自社のクラウドを利用するためのインテグレーションしか行わない」「クラウドとオンプレミスデータセンターを合わせて相談できるインテグレーターがほしい」といった顧客の要望にも応えることができるとしている。
まさにネットワーク系システムインテグレーターならではのサービスである。クラウド事業者からすると異論もあるかもしれないが、顧客調査に基づく商品企画には説得力があった。ハイブリッドクラウドにどう取り組めばよいかと頭を悩ませるユーザーにもヒントになるところがあるのではないだろうか。
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