iOS 10とSiriで変わるビジネスアプリの世界(1/2 ページ)
2016年9月14日に正式リリースされたiOS 10とwatch OS 3。この新OSは、iPhoneやiPad、Apple Watchのビジネス活用にどのようなインパクトをもたらすのか。
2007年の登場以来、いつでもどこでも働ける環境作りに大きく貢献してきたAppleのiPhoneとiPad。このデバイスを支えてきたのがiOSだ。
両デバイスとも、その使いやすさからコンシューマー向け製品のイメージが強いかもしれないが、iOSには多くの企業向けの機能が用意されており、高度なセキュリティによってデバイスやデータも厳重に保護されている。iOSはビジネス向けのモバイルOSとして着実に進化し続け、モバイルのビジネス活用を強力に支援してきた。
iOS向けには、サードパーティー製のビジネスアプリケーションやサービスが多数提供され、既にさまざまなビジネスシーンでiOSデバイスをとりまくエコシステムが形成されている。そして、近年の米IBMや米Cisco Systems、独SAPとの提携からも分かるように、Appleはエンタープライズ市場のシェア拡大に対して並々ならぬ意欲を見せている。
こうした中、2016年9月14日に正式リリースされたiOS 10とwatch OS 3は、ビジネスにどのようなインパクトをもたらすのだろうか。Apple製品を対象とした法人向けのアプリ開発や導入支援をなりわいにしている筆者の見解をご紹介しよう。
なお、本記事で紹介するのはiOSの機能であり、9月16日に発表されたiPhone 7/iPhone 7 Plus以外のiOS 10対応のiPhoneシリーズでも利用可能だ。
サードパーティー製アプリでSiriを利用可能に
iOS 10の機能で筆者が注目したのは、Siriに使われている音声認識機能をサードパーティー製アプリでも使えるようになったことだ。
これまでも、iOSのソフトウェアキーボードに用意されている音声認識ボタンを使うことで、音声による入力はできたが、キーボードなしでは使えず、録音した音声ファイルの音声認識にも対応していなかった。iOS 10では、これが可能になったのだ。
この音声認識が生きてくるのは、ウェアラブルデバイスやロボット等の音声インタフェースを中心としたデバイスとの連携だと筆者は見ている。
これらのデバイスは、テキスト情報の入力インタフェースとしてフルキーボードを備えていないものも多く、利用者とのコミュニケーションは自然言語による音声が中心になる。その使い勝手を左右するのは自然言語の音声データをテキストに変換する際の認識精度や、自然言語の理解度であり、Siriのこれまでの実績が生きてくるはずだ。
音声認識は既に、さまざまなサービスが存在しているが、その中でSiriを採用するメリットは、OSの標準機能として多くの利用者になじみがある音声認識機能を使える点だ。Siriを使ったことがあるiOSデバイスのユーザーなら、音声認識を最大限に利用したSiriのユーザー体験を知っているため利用のハードルも下がるだろう。
また、特定の領域におけるSiriの機能(VoIP Calling、Messaging、Photos、Payments、Workouts、Ride Bookingなど)がサードパーティー製のアプリケーションで利用できるようになったことにより、アプリケーションの入力インタフェースとして音声を活用する流れは加速するだろう。
さらに、音声認識と連動した自然言語の理解に必要なコグニティブ技術の存在も忘れてはならない。音声認識でテキストに変換された自然言語は、IBMのWatsonなどとの連携で、(時には曖昧な)自然言語の意味が解釈され、企業が持つ膨大なデータソースから最適な回答の候補を即座に提示したり、今まで見つけることのできなかった新たな発見を導き出したりできるようになるだろう。
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