クラウド市場に異変? 相次ぐ協業の狙いを読み解く4つのポイント:Weekly Memo(1/2 ページ)
「AWSとSalesforce.comの日本法人による協業強化」「AWSとVMwareが提携」―― 先週、クラウド市場を大きく揺り動かす2つ協業が発表された。これらの動きにはどんな意味があるのか。
AWSとSalesforce.comの日本法人が協業強化
先週、クラウド市場を大きく揺り動かす2つの協業が発表された。米Amazon Web Services(AWS)と米Salesforce.comの日本法人による協業強化、及びAWSと米VMwareによる戦略的提携がそれだ。前者は日本、後者はグローバルを対象にした話だが、これら2つの協業から見えてきたことが幾つかある。今回はそれらをピックアップし考察したい。
まずは2つの協業の内容を紹介しておこう。アマゾンウェブサービスジャパンとセールスフォース・ドットコムの協業強化は、両社のクラウドサービスを連携させることによって、日本のユーザーニーズにきめ細かく応えていこうというものだ。そのために、連携に向けたエンジニアリングを強化し、両社のパートナーエコシステムを効果的に結び付けるとともに、連携の要となるPaaSに注力することをうたっている。
具体的な施策としては、「リファレンスアーキテクチャを開発する両社のエンジニアによるクラウドデザインセンター(CDC)の設置」「ベストプラクティスを両社のパートナーエコシステムへ展開」「AWSをベースとするPaaS“Heroku”を軸とした営業協力」「共同マーケティングの実施」を挙げている(参照)。
今回の両社の協業強化は、今年5月にSalesforce.comが主要クラウドサービスのインフラにAWSのIaaSを採用すると発表した延長線上の動きである。具体的には、Salesforce.comがそれまで自社運用していた営業支援サービス「Sales Cloud」やコールセンター用サービス「Service Cloud」、社内情報共有サービス「Community Cloud」、データ分析サービス「Analytics Cloud」などのSaaSのインフラにAWSのIaaSを採用するというものだ。Herokuなど一部のサービスについては既にAWSを採用しているが、5月の発表では主要なSaaSをAWSで展開することを明言した(参照)。
米国本社による5月の発表内容からすると、今回の日本法人両社の協業強化の対象は一部にとどまっている。とはいえ、発表会見では両社のパートナービジネスの責任者が顔をそろえて説明に立ち、日本独自の取り組みを強調した。セールスフォース・ドットコムの手島主税 常務執行役員は、「今回の取り組みは両社協業の序章にすぎない」とも述べ、さらなる協業拡大を示唆した。米国本社が5月に発表した内容が近いうちに日本でも展開されそうだ。
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