クラウド市場に異変? 相次ぐ協業の狙いを読み解く4つのポイント:Weekly Memo(2/2 ページ)
「AWSとSalesforce.comの日本法人による協業強化」「AWSとVMwareが提携」―― 先週、クラウド市場を大きく揺り動かす2つ協業が発表された。これらの動きにはどんな意味があるのか。
2つの協業から見えてきた4つの動向
両社の会見で筆者が最も印象深かったのは、協業によってIaaS、PaaS、SaaSの全てを手掛けていく姿勢を示した図を掲げていたことだ。これだけを見れば、両社はいずれ「合併」するのではないかとも思わせる。発表ではこの図を「理想像」と表現していたが、両社の協業がさらに「深化」するのは間違いなさそうだ。手島氏の「序章」という言葉は、どうやらその意味のようだ。米国本社同士でそのうち大きな発表があるかもしれない。
一方、AWSとVMwareの戦略的提携では、AWSクラウドのベアメタル上でVMware環境を実現し、ハイブリッドクラウドの構築を容易にする「VMware Cloud on AWS」が発表された。ライブストリーミングによる発表会見では、AWSのアンディ・ジャシーCEOとVMwareのパット・ゲルシンガーCEOがそろって説明に立った。「AWSはVMwareにとって主要なパブリッククラウドインフラのパートナーとなり、VMwareはAWSにとって主要なプライベートクラウドのパートナーになる」とのゲルシンガー氏の発言が印象的だった(参照)。
さて、これら2つの協業から見えてきたことは何か。4つ挙げておきたい。
1つ目は、AWSの危機感である。2つの協業に関わるAWSはあたかも勢力をさらに拡大しているように見えるが、Salesforce.comとの協業はPaaS、SaaSへの取り組みを、VMwareとの提携はハイブリッドクラウドへの対応を強化したものだ。いずれもAWSにとってはこれまで課題だった領域である。筆者はあえてそこにAWSの危機感を見て取った。
2つ目は、クラウド分野においてユーザーニーズに基づいた協業が加速することだ。今回の2つの協業で共通しているのは、3社ともクラウド分野で既に多くのユーザーを抱えていることである。協業というと勢力争いの手段として見られがちだが、今回の2つの協業は勢力争いよりも多くのユーザーが求めていたことに応えた印象が強い。今後はこうした協業が増えていきそうだ。
3つ目は、とはいえ対立構図が鮮明になってきたことだ。今回の2つの協業の狙いは、前者がパブリッククラウドによるフルスタックサービスの強化、後者がハイブリッドクラウドの強化にある。とすれば、いずれも最大のライバルになるのは米Microsoftである。とりわけ同社のSaaS「Office 365」の急拡大ぶりには目を見張るものがある。しかもハイブリッドクラウドにおいても、同社には圧倒的なユーザー基盤がある。従って今回の2つの協業は、Microsoft対抗策ともいえそうだ。
そして4つ目は、上記の3つも含めて、クラウド市場が新たなステージに入ったことである。今回の2つの協業はいずれも“強者連合”といえる。こうした協業が相次ぐのは、ユーザーニーズがさまざまな形で強まってきたことの証しである。それはすなわち、クラウドが本格的に使われるようになってきたことを意味する。
以上が、今回の2つの協業から見えてきたことである。クラウド市場は今後、さらにダイナミックな動きがあるだろう。当たり前のことではあるが、あらためて「ユーザーにとってどうか」という視点がますます重要になりそうだ。
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