業界初、資生堂が84インチ「Surface Hub」を導入した理由:ITの力で全国の社員をつなぐ(2/4 ページ)
資生堂が社員の多目的ワーキングスペースに84インチの「Surface Hub」を導入。同スペースを運営するのは「未来創造局」という部署だという。何だか「化粧品の老舗ブランド」という資生堂のイメージとは違うような……? 実際にどのようなニーズや効果があったのか、担当者に聞いてみた。
シャイな社員たちに交流を促す秘策、コーヒーマシンにあり!?
例えば、PIT中央に設置しているコーヒーマシンもその1つだ。コーヒーを無料で飲める場所だが、ここにも社員の交流を促す仕掛けがある。
「このコーヒーマシンは、1杯のコーヒーをいれるのに40秒ほどかかります。『2台置きませんか』と言われましたが、あえて1台にしているんです。そうすると、皆さんコーヒーを飲むためにここで待つことになりますよね。その間に『どこの部署ですか?』とか『今日寒いですね』とか、そんな会話が生まれればと考えています」(萩原さん)
この場を使ったワークショップやセミナーなどの企画も多い。イベントを主催するのは未来創造局以外にも、IT部門やリサーチ部門、グループ会社などさまざまだ。単なる飲み会ではなく、「知識や経験の共有」という要素が含まれるのであれば、夜はアルコールを持ち込んでもよいのだそうだ。
萩原さんいわく、資生堂の社員はシャイな人が多いという。「今までは交流のなかった社員同士がそれぞれの知識を交換し、新たなアイデアの誕生につながるように、今後も工夫を凝らしたい」と語る。
社員の要望から生まれた「PIT」、口コミで広がる
萩原さんが所属する未来創造局は、社内公募でメンバーが集められ、2015年4月に新設された部署だ。そのミッションは「100年先の資生堂の未来を考え、社員のトライを後押しする」。社員のアイデアの具現化や部門を超えた連携を、ボトムアップで推進していくことが求められているという。
部が結成されてすぐ、局員らは「未来創造マラソン」と銘打ち、100年先の会社のあるべき姿について、全国の社員にヒアリングしてまわった。PITはその中で挙がった「もっといろいろな社員とコミュニケーションしたい」「自由な発想が出やすい、開放的なオフィスが欲しい」といった意見を基に企画された。
「PIT」は普段社員が行き来する動線から少し離れた場所にあるため、同じビルで働いていても、まだ存在を知らない社員もいる。それでも、オープンして3カ月で毎月のべ500〜600人の社員が訪れたという。目立たない場所にあることでかえって“秘密基地”のような存在となり、一度訪れた社員が他の社員を連れてくることが増えているそうだ。
萩原さんは、「エレベーターに乗っていたら、『ちょっといい場所見つけたから、今度のミーティングはそこでやろうよ。コーヒーが飲めて、PITって名前なんだけど……』という会話が聞こえてきて、『やった!』と思いました」とうれしそうに語った。
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