Salesforce.comの成長を支える“2つの強み”:Weekly Memo(1/2 ページ)
クラウドサービス専業最大手のSalesforce.comが成長を続けている。その理由の核心はどこにあるのか。先週、同社の日本法人が開いたイベントから探ってみた。
「Customer Success」を盛り込んだサービス体系の総称
「創業以来17年、Salesforce.comがここまで成長できたのも皆さまのおかげ。深くお礼申し上げたい」―― 米Salesforce.comの日本法人であるセールスフォース・ドットコムの小出伸一会長兼社長は12月13日、同社が都内ホテルで開いた顧客およびパートナー企業向けのイベント「Salesforce World Tour Tokyo 2016」の基調講演で、まずこう語った。
小出氏が言うように、Salesforce.comの成長ぶりは目を見張るものがある。同社が先頃公表した売上高の見通しでは、2017年度(2017年1月期)に83億ドルを超え、2018年度(2018年1月期)には100億ドル超が確実になった。ここ数年は毎年、売上高を10億ドル以上積み上げてきている。
同社のマーク・ベニオフCEOはこの見通しを公表した際、「このままで行けば、他のどのソフトウェアベンダーよりも早いペースで売上高200億ドルを達成できる」と述べている。この点については、小出氏が基調講演で「われわれは今やソフトウェアベンダーとして世界第4位の売り上げ規模になった」と語っており、ベニオフ氏の発言は上位3社のMicrosoft、Oracle、SAPを追撃する姿勢を打ち出したものといえる。
では、Salesforce.comが成長し続けている理由の核心はどこにあるのか。筆者なりに基調講演から次の3つの発言を取り上げたい。
まず1つ目は、小出氏に続いてスピーチしたSalesforce.comのアダム・ブリッツァー エグゼクティブバイスプレジデント&Sales Cloud担当ゼネラルマネージャーの次の発言である。
「創業以来、テクノロジーはクラウドからソーシャル、モバイル、IoT(Internet of Things)へと広がってきた。そうした中で、当社はCRM(顧客情報管理)を基にこれらのテクノロジーにもいち早く対応し、お客さまに一番近いところでデジタルトランスフォーメーションを支えてきた。そして今、AI(人工知能)の活用とともにカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を一層高めようという動きが注目されている。これこそ、お客さまとともにデジタルトランスフォーメーションを進めてきた当社が最もお役に立てるところだ」
「Salesforce Customer Success Platform」―― これが今、Salesforce.comが最新のAIプラットフォーム「Einstein」を組み入れて整備したサービス体系の総称である。ブリッツァー氏のコメントは、このサービス体系の説明と言ってもいい。「Customer Success」とストレートに表現するところが同社らしいといえる。(図1参照)
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