なぜ、日本の企業は「標準化」ができないのか?:失敗しない「外資系」パッケージソフトとの付き合い方(1/3 ページ)
外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。今回は、重要だけれども失敗しやすい「標準化」のお話です。日本のIT運用の現場において、驚くほど進んでいない標準化。その理由はどこにあるのでしょうか。
前回の記事(パッケージソフトの機能を「使いこなさない」人たち)では、サーバOSのパッチ適用の場面を例に、パッケージソフトウェアの導入時の問題点を、局所最適と全体最適の観点で解説しました。今回は、その中でも問題になりやすい“標準化”にまつわる問題を取り上げます。
率直に言ってしまえば、日本のIT運用の現場において、標準化は“驚くほど”進んでいません。その理由がどこにあるのか、前回と同じく、サーバOSパッチ適用効率化のプロジェクトを例に考えてみたいと思います。
パッケージソフトウェアの導入に際し、ベンダーの懸命な説得で、導入企業側の担当者も作業の一部分ではなく、プロセス全体を自動化する方向に考えが変わり始め、経営層がバックアップする体制も整いつつある状況でのお話です。
失敗事例8:「要望に細やかに応える、職人的な文化」
パッケージソフトウェア購入企業の担当A: このソフトウェアは、パッチがリリースされてからパッチ適用までの一連の手作業を自動化できるんですよね。手順もある程度カスタマイズ可能と聞いています。弊社ではWindows OS上で稼働するシステムが100以上あり、手順はシステムごとに開発者が用意したもので、各システムに最適化されています。それを全て自動化するとなると膨大な作業が必要になりそうですが……。
ソフトウェアベンダーB: おっしゃる通りです。全ての手順をそのまま自動化すれば膨大な作業量になるうえ、維持管理にかかる労力もはかりしれません。そのため、代表的な手順を確立して標準とし、各システムに適用していくことを推奨しています。そうすれば、カスタマイズも最小にでき、かつ大きな効果が得られます。
担当A: それは、今あるシステムごとの手順を変えるということですか? それは厳しいですね……。社長からの指示で開発部門も協力する体制はできましたが、われわれは安定運用が第一です。手順を統一すれば、今までのサービスレベルを保てないケースも出てくるでしょう。開発側からも文句が出るに決まっています。そもそも我が社は、個別の要望にきめ細やかに応える、職人的な文化を大事にしているのです。会社もそれは否定できませんよ。製品が柔軟にカスタマイズできるのなら、それで対応できそうじゃないですか。
ベンダーB: (個別最適の話に戻っているな……)分かりました。ここは一つ、本来の目的とその達成を阻害する要因について整理していきませんか?
このまま担当Aの言う通り、システムごとにカスタマイズを行っていては、このプロジェクトが失敗することは間違いなさそうです。仮にパッケージソフトを導入しても、費用に見合う効果は得られないでしょう。
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