ビッグデータで株式投資はどう変わる? カブドットコムの先進事例:API公開からAI活用まで(3/3 ページ)
社長が自らデータに触れて、データの分析や活用を進めるカブドットコム証券。同社代表執行役社長の齋藤正勝氏が日本データマネジメント・コンソーシアムが主催するユーザー会で、データ活用の取り組みについて講演を行った。
Tableauについては、本格的に活用するとなると社員のトレーニングが重要だが、ベンダーによるトレーニングだけではなく、他にも多くのトレーニングプログラムがあるため、より多くの社員が使えるようにコストと内容を考えて、オンライン学習なども併用するのがオススメだと齋藤氏は話す。
「Tableauは全部門で使っていますが、もちろん全員が使っているわけではありません。約120人の社員に対して10%弱のメンバーがヘビーユーザーで、30人ぐらいが普通に使っている状況です」(齋藤氏)
データ解析の結果をAPIとして開放、他サービスとの連携に注力
同社ではデータ解析の結果を、社内だけではなく顧客への価値提供にも応用している。例えば、資産管理のシミュレーションアプリ「FUND ME」では、口座別投信残高、リスクメジャー、顧客属性データを「匿名化」によって、デモグラフィックデータとして利活用したり、1分足ベースで400万件/日・配信気配本数ベースで4000万件の取引所データを使って、各銘柄の近未来の予想売買高を計算し、ランキング化して株価のリアルタイム予測もしているという。
また、画像認識技術を使って株価のチャートを画像として認識させ、人工知能による類似チャート銘柄を検出する取り組みも行うなど、先進的な技術を次々とビジネスに取り込んでいる。
特に最近では、同社のサービスをAPI化(kabu.com API)して、データを提供したり、他サービスと連携したりする取り組みにも注力している。特にTableauとの連携については、他社に先駆けていち早くプロジェクトを進めたそうだ。
「Kabu.com APIとTableauを連携させるにはまず、TableauのWebデータコネクタでkabu.com APIにアクセスします。次にTableau連携サーバからJSON記述で出力し、Tableauクライアント上に表形式で可視化。最後に4本値データなど、豊富なkabu.comから提供されるデータをTableau上で描画して分析に生かすのです」(齋藤氏)
このように、Tableauのパワーユーザーやトレーダーなどの顧客が、kabu.comから提供されるデータを使えば、自分の株取引に生かせるようになる。そして、ただAPIを提供するだけでなく、Tableau社と交渉してTableauの1つのメニューとして組み込んだことは金融業としては非常に珍しく、先進的な取り組みといえるだろう。
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