「データ分析ツールは“大人のオモチャ”のような存在であればいい」――カブドットコム 齋藤社長(2/4 ページ)
業務改善から新ビジネス創出まで、幅広い分野でデータ分析を駆使しているカブドットコム証券。データ分析ツールの利用者を増やし、データで物事を語る文化はどのようにして生まれたのか? 講演後のパネルディスカッションでその秘密が見えてきた。
セルフサービスBIを社員に使わせるには?
参加者C: 当社もBIツールを使っていますが、なかなか活用が広がらないのが現実です。ダッシュボード的な使い方はしても、シミュレーションや予測という高度な使い方ができていない。当社は海外拠点でもツールを展開していますが、海外の人は使っても日本人はなかなか使わないし使えない。カブドットコムでは、なぜ10%弱もの社員が使えているのですか?
齋藤氏: 会議や社外にもレポートを公開していて、作成者を記載しています。そうすると見せて恥ずかしいものは作れないし、カッコつけるために皆頑張ります。レポート作成者は“縁の下の力持ち”ではなく、前面に出すようにしていますね。コンテストを開いてキレイなレポートを表彰することもあります。
加えて、ユーザー部門の支援がモチベーションになっていることもあります。ユーザーが欲しいのは二次加工データで、生データではありません。「このデータは計算して蓄積しておいた方がいいよな」という同僚への気遣いが大事で、あらかじめ集計したり、並べ替えたりしておくといい、ということを知る楽しさがあるのかもしれません。
寺澤: 2次加工をしているのは、DWHを管理するシステム部門なのか、BIツールを使うユーザー部門なのか、どちらですか?
齋藤氏: その両方ですね。ユーザー部門はどのようなデータが欲しいのか、意外と分かっていないもので、BIツールやDWHを使う立場で気付く人間が「こんなのはどう?」という軽いスタンスで作っています。両方の部門でそれができる人がいるのは、IT部門とユーザー部門のジョブローテーションをしていて、社員のITリテラシーを高めるようにしているからだと思います。
寺澤: 「10%程度の人がBIツールのヘビーユーザーで、30%程度の人がそれなりに使える」ということでしたが、ツールを使わせる人はどう選んだのでしょう?
齋藤氏: 最初は、「データベースのプロ」「スーパーExcel使い」そして「Excelをそれほど使えない人」の3人を選びました。この3人にトレーニングを受けさせて、BIツールを使えるようにした。その後にはこの3人からの推薦で使い手を増やしていきました。
寺澤: 先ほどの方も言っていましたが、やはりBIツールは使いこなせない人も多いと思いますし、Excelの延長上でしか使えていないという話もよく聞きます。
齋藤氏: まず、紙で見せるからダメなんですよ。印刷した時点でExcelもBIツールもほとんど変わらなくなってしまいます。当社も役員会議では印刷した紙を配布しますが、議論や分析をするときは、紙ではなくディスプレイを見ながら、BIツールのエキスパートがさまざまなデータをインタラクティブに操作して、最適解を見つけようとします。紙なのか、オンラインなのかは目的で分かれますよね。
関連記事
- ビッグデータで株式投資はどう変わる? カブドットコムの先進事例
社長が自らデータに触れて、データの分析や活用を進めるカブドットコム証券。同社代表執行役社長の齋藤正勝氏が日本データマネジメント・コンソーシアムが主催するユーザー会で、データ活用の取り組みについて講演を行った。 - 「君たちはPCと机に向かうな」 ダイハツのIT部門が現場に飛び込んだ理由
自動車製造業のIT部門が、机に向かっているのは間違いだ――。社長の言葉を受けて、ダイハツの情シスは“インフラ運用部隊”と現場に飛び込む“遊撃隊”に分けられた。IT部門の存在意義とは何か。試行錯誤を繰り返す中で、ダイハツがたどり着いた答えとは? - コマツにおけるデータマネジメントの要はグローバル管理と一気通貫の流れ
超大型から最小クラスまでの建設機械の製造・販売を事業とするコマツ。部品点数が多く、バリエーションも多い建設機械を効率的に製造・販売するために、いかにデータ管理を実践しているのか。JDMCのデータマネジメント大賞も受賞したコマツのデータ管理を学ぶ。 - 680億PVのヤフーを支えるDWH活用、14年の歴史の“裏側”
100以上のサービスを展開し、月間680億PVの巨大ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」。そこで得られる膨大なデータを蓄積するデータ分析基盤はどうなっているのか。その全貌と苦労の歴史、そして“よりよい分析環境”を作るために意識していることを聞いた。 - オートバックスセブンが「2800万人」の顧客データを分析できた理由
1980年代から会員カードの発行を始め、1990年代にポイント制度を導入するなど、顧客の属性や購買行動を基にしたマーケティング活動を早くから始めてきたオートバックスセブン。近年は約2800万人のデータを分析しているが、分析精度を高める取り組みとともに、データ分析基盤の整備も行ってきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.