“片頭痛予報”も実現? 気象データの新しい使い方を考えてみた(2/3 ページ)
気象データと自社のデータを組み合わせると、どんなビジネスが生まれるのか――。日本気象協会の講演後に行われたディスカッションでは、さまざまなアイデアが生まれた。
寺澤: 気象データというと科学的な話が多いイメージがありますが、Twitterのつぶやきのような主観的な話も入ってくるのは意外でした。実際の購買行動や衣服の選択というのは、主観的な体感温度の話なので、これも重要なのでしょうね。
吉開氏: 購買動機の正解探しは、意外と難しいです。例えば、暑い寒いというような感覚でアイスクリームを買ったかもしれないし、全く異なる要因で買ったかもしれない。気象情報と行動の相関を見いだすのは難しいんです。
寺澤: 数時間後の気象予測であれば可能だが、長期予測となると途端に難しくなるとおっしゃっていました。長期予測を可能にするブレイクスルーは何が考えられますか?
吉開氏: 長期予測の精度を上げるためには、アルゴリズムや予報モデルの発達という問題もあるとは思いますが、現状において必要なのは、コンピュータ性能の向上です。特にCPU性能が上がれば上がるだけ精度が高まり、より長期な予測ができるようになると思います。
気象データで“片頭痛予報”が実現?
寺澤: さて、ここからは参加者の皆さんがお持ちのデータと気象データを組み合わせることで、どのようなことができそうなのかを教えてください。参加者の中にはB2C企業の方がいらっしゃいます。これらの企業のビジネスと気象データを合わせると何ができるでしょうか。
チームA: 私たちはドラッグストアのような小売店として2つ考えました。1つは前年の気象データと花粉量、そして今年の風の予報から花粉飛散量を指標化して、ドラッグストアでの花粉対策の薬やグッズの店頭展開を変えてみる。
もう1つは、気圧の変化によって片頭痛や神経痛が起きると思っているのですが、頭痛がしたり、膝が痛かったりしたという情報をアプリなどで伝え、その時点と場所における気象計測値があるので、もし同じような気象状況になりそうな予測が出ていれば、そういった方々に「あと数時間で頭が痛くなるかも」というアラートをすれば、前もって薬が飲めて楽になるかもしれませんね。
吉開氏: 先ほど、因果関係を探すのは難しいという話をしましたが、データ収集はとても有効です。片頭痛持ちの人が頭痛のデータを都度入力してくれれば、予報は実現できるかもしれません。
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