“片頭痛予報”も実現? 気象データの新しい使い方を考えてみた(3/3 ページ)
気象データと自社のデータを組み合わせると、どんなビジネスが生まれるのか――。日本気象協会の講演後に行われたディスカッションでは、さまざまなアイデアが生まれた。
気象データはAPI化されるか?
チームB: このチームでは、デパートのような小売店を想定して3つ考えました。まずはやはり、気象状況と商品の売れ行きは相関があると思うので、気象情報と商品の販売実績の分析をすることで、気象予報に合わせた商品展開を考える。
2つ目は、先ほどの実証にあったように、気象情報から店舗ごとの来店者を推測して、空調などのコントロールをプロアクティブにすることで、費用削減になるのではないかと考えました。3つ目も、これに関連しますが、来店者予測をした上で販売員の増減を事前にコントロールすることで、最適な人員配置ができるようになるかなと。
チームC: 私たちのチームも3つあります。1つ目は、ドローンを飛ばすときに風と雨は良くないので、ドローンを飛ばす事業者向けに気象データを提供します。2つ目は、花粉症やインフルエンザなど、季節や気温、湿度などによって左右される症状を避けることができるよう、なるべく地域を細かく分けて、花粉症やインフルエンザなどのリスクを短期的な予報と長期的な予報で知らせるというアイデアです。
最後は、特定地域と気象データを不動産業に提供して、地域特性を考えた住宅の開発と販売ができるようにします。
寺澤: どのチームからも面白いアイデアが出てきましたね。個人的には、片頭痛予報をぜひ実現してほしいと思いますが……。吉開さんは、気象データを多くの企業が使えるように、API経由で気象データを提供することなどは考えていますか? もしそうであるならば料金体系などはどう考えるべきなのでしょう。
吉開氏: 具体的に考えているわけではないですが、海外ではそのような事例もありますので、将来的にはAPIなどを通じて気象データを提供することは考えられると思います。天気予報の定性的な情報であれば、弊社でも「天気予報API」として提供を行っています。
ただ、まだまだ企業の中には異業種、異企業とのデータ共有の壁がある気がしていますし、予測情報を利用した意思決定や、その要因となった気象データの有効性とリスクヘッジの問題もあるでしょう。このあたりをしっかりと啓蒙して、民間企業においても気象データをどんどん活用して、価値に変えられるようにしていきたいですね。
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