どうなる? GoogleとSAPの提携にみるクラウド市場の勢力争い:Weekly Memo(1/2 ページ)
GoogleとSAPがクラウド分野で戦略的提携を発表した。SAPのソフトウェアをGoogleのクラウドで利用できるようにするという両社の提携は、エンタープライズ向けクラウド市場の勢力争いにも大きく影響しそうだ。
エンタープライズクラウドに向けた戦略的提携
先週、クラウド市場において大きなニュースが世界を駆け巡った。GoogleとSAPが米国時間3月7日、戦略的提携を発表したのがそれだ。(図1参照)
提携内容は、SAPのソフトウェアをGoogleのクラウドで利用できるようにするというのが骨子だ。これにより、オンプレミスで使われているSAPのソフトウェアをクラウドへ移行したいというユーザーニーズに応える。
大きなポイントは、GoogleのIaaS「Google Cloud Platform(GCP)」でSAPのインメモリデータ処理プラットフォーム「SAP HANA」が認定されたことにある。これにより、エンタープライズソフトウェア市場で広く使われているSAPのERPをはじめとした業務アプリケーションがHANAベースへ移行するのに伴い、GCPの利用を促進していく構えだ。
また、両社は双方の業務アプリケーションの連携を深めたソリューションを展開していくとしている。例えば、Googleのメールサービス「Gmail」とSAPのCRMサービス「SAP Cloud for Customer」、もしくはGoogleのカレンダーサービス「Calendar」とSAPの出張旅費管理サービス「Concur Tripit」を組み合わせて、業務の生産性を高めるのが狙いだ。
さらに、Googleが得意とする機械学習技術についても、双方の業務アプリケーションの連携を深めていく中で、利便性を一層高めたインテリジェントなサービスの実現に向けて、共同作業を進めながら注入していくとしている。
こうした内容から、今回の両社の戦略的提携は、エンタープライズソフトウェア市場で確固たる実績を持つSAPと手を組むことで、これまでクラウド事業においてなかなか入り込めなかったエンタープライズ分野に攻勢をかけたいGoogleと、HANAおよびその上で動く業務アプリケーションを普及拡大させていくために強力なIaaSや機械学習技術を取り込みたいSAPの双方の思惑が一致したものといえる。
両社のこうした提携は、エンタープライズ向けクラウド市場の勢力争いにも大きく影響しそうだ。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- NECとの提携に見る、Oracleのクラウドサービス新戦略
NECと日本オラクルが発表したクラウド分野の提携は、Oracleにとってクラウドサービスの新たな普及戦略を本格的にスタートさせたことを意味している。 - 覇権争いが激化 エンタープライズプラットフォームの勢力図はどう変わる?
エンタープライズプラットフォームをめぐる勢力争いが激しくなってきた。この分野で火花を散らすSAPとOracleが先週、相次いで興味深い動きを見せた。果たして今後の行方やいかに。 - 握手の裏の思惑は クラウド業界で加速する“協業と競争”
「Salesforce.comが主要サービスのインフラにAWSを採用」「HPEがサービス部門を分離」「SAPとMicrosoftが協業拡大」―― 最近発表されたこれらの動きは果たして何を意味しているのか。 - ERPデータとビッグデータ分析の連携を実現する SAP HANA Vora + MapR
基幹系データを活用しつつ、ビッグデータに備えたシステム構築に必要なシステムアーキテクチャとは。SAP HANA VoraとMapRを連携させ、Lenovoサーバ上で動作させる検証を基に、3社およびCTCの4社が共同でベストプラクティスを提案。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.