あなたの会社の人手不足を救うロボットーー「RPA」って何ですか?:大手金融機関に100台単位で導入(2/3 ページ)
「こんな雑用やってられるか!」――職場でこう言いたくなった経験がある人は多いのでは。最近ではこうした仕事を“ロボット”にやらせる「RPA」がトレンドになりつつあるという。業務改革を推進する企業にとって“現実解”ともいえる存在になりそうだ。
人間がコンピュータに向かってする仕事を「ほぼ代替可能」
信國氏によれば、人間がコンピュータに向かって行う作業であれば、ほとんどがRPAで代替できる可能性があるという。経理、人事、総務といったバックオフィス系の業務はもちろん、SNSへの投稿やWebでのデータ収集、レポート作成といったことにもよく使われるそうだ。特に人間がPCを使い、複数の機能やアプリケーションをまたいで行う定型業務を自動化するのに向く。
「例えばレポーティング作業において、必要な情報が1つのデータウェアハウスに統合されているなら手間も少ないでしょうが、残念ながら日本企業ではさまざまなところに情報が分散していることがほとんどですね。それを人間が集め、品番や部門名などでマージして整形し、PowerPointに貼り付けて提出する……といったことを限られた時間内でやっているわけです。そういうことは、ロボットにやらせれば非常に速くできます」
為替レートや原油価格などを毎日調べ、注目すべき変化があったらアラートを出す、といった“定点観測”的な業務も、ロボットの作業に向いている。
「人間が朝出勤してからやっていたことを、ロボットならば出勤前に行ってメールで共有できてしまいます。これも弊社の例ですが、以前は昼に数字の読み合わせから始めていた会議を朝一でスタートできるようになり、数字は各自が確認済みという前提で、考えるところから始めるようにしました。会議の質が変わり、意思決定のタイミングも早くなります」(信國氏)
人間のような心身のケアが不要な「ロボット」
RPAの“正体”はソフトウェアではあるものの、「ロボット人材」や「デジタルレイバー(Digital Labor=仮想知的労働者)」などと呼ぶケースが多く、信國氏は「仕事のソーシング先の1つだと考えて欲しい」と語る。
従来、大企業が業務を効率化するための手法としては「SSC(シェアド・サービス・センター:グループ内の間接業務を1カ所に集めた事業部や別会社)」や「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング:間接業務の外注化)」が多かったが、3つ目の選択肢としてRPAが浮上してきたわけだ。
“人材”といっても人間ではないということから、彼らが人間と比べて圧倒的に有利なのは、「24時間365日働けて、モチベーション管理が必要ない」という点だろう。冒頭に挙げた「こんな雑用やってられるか!」という気持ちを、ロボットは持つことがない。ストレスチェックの実施や長時間労働の削減など、社員の心身のケアに大きな責任を負わされつつある企業にとって、魅力的な働き手なのは間違いない。グローバルで事業を展開する企業にとっては、時差の問題をクリアしやすい点もメリットになる。
コスト削減という観点では、作業の正確性、業務の多寡に合わせたリソース増減の柔軟性といった点もポイントだ。その上、セキュリティやガバナンスの向上も期待できる。RPAは人間に比べ、勝手に不正を行うリスクが低く、必要であれば全てログを残せるため、何かあったときに情報を開示することもできるためだ。
このように、RPAのメリットは多岐にわたるため、導入を検討するときには、期待する効果を明確にすることが重要だと信國氏は言う。国によってもその傾向は異なり、米国では「人員削減」、東南アジアであれば「セキュリティの向上」を目的とするケースが多いのに対し、日本の場合は「人手不足の解消」を目指すケースがほとんどだそうだ。
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