JR東日本が山手線に導入した、故障予知の秘密兵器(3/3 ページ)
さまざまなデータがあるものの、まだシステムがバラバラで、分野をまたがった分析などができないというJR東日本。同社は社内のデータを横断的に利用できる、クラウドシステムプラットフォームを構築しようとしている。
「例えばドア故障は突然起きるので、さっきまで動いていたのに突然閉まらなくなったりする。今まではいつ起こるか分からなかったので、定期的に点検をして、劣化する部品は早めに一斉に交換して対応してきた。だが、モニタリングができれば、ドア1カ所1カ所で劣化の傾向が分かり、『この部品は大丈夫』『この部品は危ない』ということが判断できる。そうすると、故障する前に個別に部品の交換が可能になる。劣化した部品は壊れる前に交換し、まだ十分使える部品は使い続ける。そうすれば、コストを抑えつつ、故障しない最適なメンテナンス時期や方法のマネジメントができる。さらに、交換をしたことでどういう効果があったかも追跡できる」(横山氏)
ちなみに前出のJR東日本アプリで「山手線トレインネット」を開くと、E235系が山手線のどこを走っているのかも確認できる。最先端のIoT列車を見てみたければ、このアプリで見つけることができる。
モビリティ革命の実現へ向けて、データプラットフォームを構築
「まだ先の話だが、運行データやSuicaのデータなどを活用して、Newdays(駅ナカのコンビニ)の仕入れを調節することもできるはず」と期待を寄せる横山氏。しかし、その道のりはまだ険しい。現在山手線を中心に、顧客データなどの統合をしようとしているが、「見積もりで100億とか言われて困っている(笑) だが、やらないわけにもいかない」。
構築予定のシステムでは、列車の位置情報を緯度と経度で正確に計測する予定で、例えば列車が止まった場合、どこに止まったのか、その時の設備の状況がどうなっているか、全部が分かるようにする計画だという。これが完成すれば、多様な情報を高い精度で集められるようになり、状況に応じてきめ細かく判断し、対応することが可能になる。
「消費者も親しみを持ってくれている鉄道会社として、新しいモビリティを生み出す中心となり、さまざまな方の協力を得ながら、日本の交通をサポートしていきたい」――。JR東日本が見据えるモビリティ革命に向けて、積極的にデータ活用を推進すると横山氏は話した。
関連記事
- データ分析で食品ロスを「3割減」――気象×ビジネスの可能性
企業におけるデータ活用には、社内のデータに加えて社外のデータを活用することも重要な視点だ。中でも気象データがビジネスに影響する業界は、全体の約3割だという。日本気象協会は最近、詳細な気象データをビジネスに生かすための実証実験を行っているという。 - “片頭痛予報”も実現? 気象データの新しい使い方を考えてみた
気象データと自社のデータを組み合わせると、どんなビジネスが生まれるのか――。日本気象協会の講演後に行われたディスカッションでは、さまざまなアイデアが生まれた。 - ビッグデータで株式投資はどう変わる? カブドットコムの先進事例
社長が自らデータに触れて、データの分析や活用を進めるカブドットコム証券。同社代表執行役社長の齋藤正勝氏が日本データマネジメント・コンソーシアムが主催するユーザー会で、データ活用の取り組みについて講演を行った。 - 「データ分析ツールは“大人のオモチャ”のような存在であればいい」――カブドットコム 齋藤社長
業務改善から新ビジネス創出まで、幅広い分野でデータ分析を駆使しているカブドットコム証券。データ分析ツールの利用者を増やし、データで物事を語る文化はどのようにして生まれたのか? 講演後のパネルディスカッションでその秘密が見えてきた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.