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働きやすさは「合理的な武器」に ハンズラボの長谷川流ワークスタイル改革(2/2 ページ)

デジタル改革を推進する武闘派CIOとして知られるハンズラボの長谷川秀樹氏。昼夜を問わずに働くタイプだった同氏が働き方改革を意識するようになったきっかけとは。

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店舗中心の働き方をIT部門向けにカスタマイズ

 東急ハンズに入社後、長谷川氏はIT部門の働き方に関わる改善を幾つか手掛けた。1つは有給休暇の取得推進だ。その背景には、休日が少なく、メーカーに比べると給与水準も低いという小売業の待遇への疑問があったという。

 「小売業は休みの日が少ないんです。年間107日。これはひと月に9日間(2月は8日間)だけで、それ以外は祝日も正月も夏休みも休みではない。分かっていたことですが、祝日が休みの会社から来た自分からすると、大きな違和感がありました。さらに、同じ流通業なのにメーカーさんの方が休みが多くて給料も高いと。『これはいかんな』と思って、まずは自分の部署で、“有給の100%消化”を徹底して言ってきました」

 言うだけでなく、有給を消化しない者は評価を下げることとした。それでも従わない人には最終手段として、「休めないのは、あなたの同僚や部下がどんくさいからやろ? 彼らの評価も下げとくから」と話す。渋っていた人も、周りの人に迷惑をかけまいと、休むようになったという。

 IT部門には、新たにフレックスタイム制も導入した。きっかけは、会社全体で残業時間が厳しく取り締まられるようになったことだった。それ自体は良いことだが、IT部門の場合はシステムの不具合対応など、どうしても定時以外に仕事をしなければならないことがあり、残業を目標時間内に収めるのが難しい。そこで、部署限定でフレックスタイム制を導入したところ、他の一部部署も後を追ったという。

 同社のワークスタイルは小売業のビジネスに最適化されたものだったが、部門や業務単位でみると改善の余地があったのだ。

エンジニアの働きやすさを実現する働き方改革

 その後設立したハンズラボでも、残業をしない働き方を続けている。請負契約ではなく、「準委任契約で任せてくれる相手のみと取引する」といったビジネス上の工夫もあるが、働く側のマインドの問題も無視できない。

 「残業って、仕事があるからやるという人もいますけど、案外、『会社にいることが好き』だとか、『長時間働くことが会社への貢献だ』と思い込んでいるとか、好きでやっている人も多いんじゃないかと思います。でも、エンジニアの場合は、スキルアップをしたいなら会社にいる必要はないんです。夜の勉強会などもあるので、そういうところに行く方がいいんじゃないでしょうか。われわれ管理職以上の人間は、『残業はしない方がいいよ』と言い続けていくべきだと思います」(長谷川氏)

 また、休日を増やすことも、エンジニアの採用という観点から、ぜひとも実現させたかったという。

 「前職では休みだった祝日に働かなあかん。そういうところへ、わざわざ転職しますか? ということなんですよね。家族がいて『えー、お父ちゃん、今度から祝日に遊んでくれへんの?』みたいなことになったら、そりゃあかんと」

 休日を増やすことで、親会社の東急ハンズより待遇が良いという状態になることには抵抗も大きく、苦労したというが、2017年の4月からは土日祝日が完全に休みとなる120日の休日が実現するそうだ。

 その他に、1カ月のうち3日は会社の外で仕事をして良いという「3days Outing」を導入し、従業員に定期的にアンケートを取り、「隣の部門にいる人の電話の声が気になって集中できないからヘッドホンを使用したい」などといった、合理的な提案があれば採用している。

 「従業員は、基本的には楽しく働いて給料が多い方がいいと思っているので、アンケートをとっても、正直、しょうもない提案もあります。全部聞いていたら会社が傾きますので、合理的で良い提案があればピックアップする。そこはバランスを考えながら制度改革をどんどんやっています」

 既存の常識や感情論にとらわれず、あくまで合理性をテコに改革を進めていくというのが長谷川流。「合理的な武器」としてPCやモバイル機器も良いものを与える、というのも、その考え方の一端だ。

 今後の展望として、天候や体調などに応じて柔軟に出退勤できるようにするなど、制度をたゆまずアップデートし、短い時間で生産性を上げることを追求していきたいと語った。

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