POSデータを公開、売り場づくりはメーカーとともに――異端の販売戦略を支えるデータ分析のチカラ(3/3 ページ)
データ活用を通して顧客満足度と売り上げを高めようと、さまざまな施策を行う小売業界の「トライアル」。POSデータを公開し、メーカーと店舗が同じデータを基に議論する体制を整えることが、さまざまな価値の源泉にあるようだ。
外部企業や大学と連携してプロジェクトを進める
参加者G: 外部には突出した技術やノウハウがあるベンチャー企業などもあると思いますが、このような企業とはどのように関わっていますか?
西川: 現在2店舗で、50台のカメラを使ってお客さまの性別と年齢を推定して導線を見ています。これでさまざまなことを分析しようとしていますが、このようなシステムは外部の企業と一緒にやっていますし、人工知能についても、外部の方と研究を進めています。大学と一緒にプロジェクトを進めることもあります。
参加者G: トライアルの取り組みを聞いていると、「強い意思を持ってデータ分析をする」とか、人間の意志が強く働いて「こんな実験をするんだ」とか、「この仮説を試してみる」というような、“人間臭い”判断が随所に見受けられるように思うのですが、どうしてデータ分析のような科学的な行動と、人間臭い判断が両立できているのですか?
西川: まず、従業員の直感を大切にする文化があると思います。とはいえ、直感だけで進めると失敗ばかりしてしまうので、データ分析も一緒にやってみるという考え方なのだと思います。
社名にもあるように、常にトライアルする(試す)ことを重要視していて、挑戦するという風土がある。トップも「挑戦して失敗することは、挑戦しないことより良い」とよく言います。もちろん、失敗が多すぎるのも良くないですが、やらなければ負けるという気持ちも強いですね。データ分析においても、確信や直感について否定することはなく、信念や経験も、同様に重要視しているのです。
筆者紹介:寺澤慎祐
大学卒業後に商社に10年勤務し、日本のITベンチャーでマーケティング責任者を務めたあと、サン・マイクロシステムズの政府官公庁向けビジネス開発を行う。2010年には英国ウェールズ大学のMBAを取得し、2011年にB2Bマーケティングコンサルタントとして独立。2015年にデータキュレーション社を設立した。現在は、データキュレーションの代表であると共にビジネススクールで講師も務め、JDMC(日本データマネジメント・コンソーシアム)のユーザー会にも参加し、データ活用を啓蒙している。
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