“クラウド後進国、日本”は、変われるか ガートナーの見方は:Weekly Memo(1/2 ページ)
日本のクラウド市場はどのような状況になっているのか。ガートナージャパンが先頃、その最新動向について説明した。その中から筆者が興味深く感じた内容を取り上げたい。
日本企業のクラウド採用率は16.9%で「本格利用前夜」
「日本のクラウドコンピューティングは“本格利用前夜”を迎えた」
こう語るのは、ガートナージャパン ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀(またが)忠明氏だ。同社が2017年4月26〜28日に都内で開催した「ガートナーITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」で、同氏が日本のクラウド市場動向をテーマに行った講演のひとコマである。
本稿では、亦賀氏の講演から、筆者が興味深く感じた内容を幾つか取り上げたい。
まず、図1は、注目される技術の動向を示すガートナー独自の「ハイプサイクル」におけるクラウドの現状を表したものだ。この図によると、日本でのクラウドはここ数年「幻滅期」にあったが、いよいよ「普及活動期」へと移行する節目を迎えた。この節目が、冒頭の発言にある「本格利用前夜」を迎えたことを意味している。
なぜ、本格利用の「前夜」なのか。その根拠となるのが「16.9%」という数字だ。これは、ガートナーが2017年1月に調査した日本企業におけるクラウドの採用率である。ちなみにクラウド形態別の採用率では、SaaSが31.7%、PaaSが18.3%、IaaSが16.1%、ホステッドプライベートが16.3%、プライベートが24.7%、ハイブリッドが14.4%となっている。
亦賀氏はこのクラウド採用率について、「全体として着実に増加しているが、実はIaaSが2016年から、横ばいで推移している。これは、企業が既存システムをクラウドへ移行するのに、時間がかかっているのではないかと推察される」との見方を示した。つまり、IaaSの動向が今後のクラウド採用率の伸長、さらには「本格利用」に向けて大きなカギを握っているというのが、同氏の見立てだ。
では、企業はどのようなIaaSを選ぶべきなのか。同氏が、「IaaS選定時の重要項目トップ10」として挙げたのが図2である。ただ、実は「プロバイダー自身がクラウドの本質を理解していること」が、ここ5年連続してトップのままだ。これについて同氏は、「IaaSをめぐる最大の課題が払拭(ふっしょく)されていないということ。プロバイダーは深刻に受け止めるべきだ」と警鐘を鳴らした。
図2の右側には、日本における主要IaaSの利用状況も示されている。ただ、このグラフについては「個々のIaaSの利用率における勢いを示したものとして捉えていただきたい」(亦賀氏)としている。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- クラウドサービス市場の覇者は? 最新勢力図を検証する
企業向けクラウドサービス市場はどのように推移し、どんな勢力図になっているのか。最近発表された幾つかの調査データから読み解いてみたい。果たして覇者は誰か? - 業務システムのクラウド化、成功のカギは「松・竹・梅」の見極めにあり
既存の業務システムのクラウド化はどう進めればよいのか。多くの企業が悩むこの課題に対し、ガートナーのフォーラムで明快な対策を聞いたので、その内容をもとに考察してみたい。 - 改めて問う「クラウドの本質的なメリット」
企業がクラウドを利用するメリットは何か。最近、その本質的なポイントがぼやけてきているように感じる。ガートナーのフォーラムで同じ問題意識の話を聞いたので、その内容とともに掘り下げて考えてみたい。 - クラウドERP、7割強が「利用しない」も5年後に急減か
多くの企業が現時点では利用しない意向だが、10年後は大幅に減ると予想されている。 - ITリーダーが押さえておくべき「2017年以降のIT人材に関する展望」――ガートナー見解
2020年末までに日本のIT人材は質的に30万人以上の不足に陥り、また国内のIT部門の10%が組織の「一員」としてロボットやスマートマシンを採用するという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.