データ主導のスマートシティが、衰えた工業地帯を復活させる?:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(45)(2/3 ページ)
米国運輸省が実施した「スマートシティ・チャレンジ」で、全米78都市の中から選ばれたのが、さびついた工業地帯“ラストベルト”で知られるオハイオ州のコロンバス市だ。地域変革を目指すスマートシティをデータ活用の観点から見てみると……?
データドリブンのスマートシティを支えるオープンガバメント
コロンバス市は、接続された交通インフラストラクチャ、電気自動車(EV)充電インフラストラクチャ、統合型データ交換プラットフォーム、強化された人的サービス、自動運転車などの新技術を利用して、住宅地域、商業地域、都市部、物流地域の課題解決(安全、安心、モビリティ、機会の平等、気候変動など)に取り組む統合的なスマートシティ計画を提案している。
さらに、同市は、スマートシティを支える要素技術を統合するために、以下の5つの戦略を掲げている。各戦略とも、ブロードバンドネットワークを介したビッグデータとの連携や統合が前提条件となっている。コロンバス市の場合、過去のオープンデータ(オープンガバメント)施策を通じて、市民視点に立ったデータのアクセシビリティやユーザビリティが整備されている点が強みだ。
- 乗り換えサービスを効率的に改善するための、インテリジェントなインフラストラクチャ機能を実証するスマートな走路の構築
- トラックが荷物を配送する高速道路システムの信頼性を改善する、経路決定アプリケーションで補完される交通情報データの迅速性と品質の強化
- 主要なイベント(インシデント)に関して、集中する移動需要による影響を最小化するための、交通、駐車状況と乗り換えの選択肢に関するリアルタイム情報のプッシュ提供
- 低所得で銀行口座を持てない住民や、共有される情報やサービスにリアルタイムでアクセスしたり、利用したりするためのスマートフォン(データサービス)を持たない人々が、直面しうる障害を取り扱う通信技術ソリューションの構築
- エネルギーや気候変動の目的で提供するために、政策、実践の変更やスマートグリッドの拡張を通した電気自動車やスマート自動車利用の拡大
以下に、同市が提供しているオープンデータポータルのうち、地理情報(GIS)データおよび関連するアプリケーションサービスの例を挙げた。このようなサービスが、いつでもどこでも利用できるモビリティの高さは、スマートシティプロジェクトに欠かせない。
加えて、コロンバス市の提案に対しては、前述の本田技研工業をはじめとする地元の自動車産業も全面的に協力している。長年ラストベルトを支えてきた米国系製造企業が相次ぎ撤退した1980年代、代わりに日系企業が進出して継続的な雇用に貢献してきた。そして今日、全米一と評価されたスマートシティ計画の一翼を担っているのだ。
そんなコロンバス市を手本とし、他の都市でもスマートシティへのさまざまな施策が展開されているが、都市間にあるさまざまな“格差”が課題になっている。
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