データ主導のスマートシティが、衰えた工業地帯を復活させる?:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(45)(3/3 ページ)
米国運輸省が実施した「スマートシティ・チャレンジ」で、全米78都市の中から選ばれたのが、さびついた工業地帯“ラストベルト”で知られるオハイオ州のコロンバス市だ。地域変革を目指すスマートシティをデータ活用の観点から見てみると……?
コロンバスを追いかけるシンシナティのデジタルデバイド解決策
米国では、2008年のリーマンショック後の景気浮揚策として制定された「2009年米国再生再投資法(ARRA)」に基づき、電子カルテシステムやスマートメーターとともに、ブロードバンドインターネットの導入支援策が実施されてきたが、ブロードバンドにアクセスできない地域は依然として残っている。
このように、デジタルデバイド(情報格差)が存在する状況はオハイオ州内でも同様だ。コロンバス市のように、ブロードバンドインフラ上でさまざまなスマートシティのサービスが展開可能な地域は限定されており、まだら模様の格差をどう解消するかが、ラストベルト共通の課題となっている。
例えば、オハイオ州の南西端に位置するシンシナティ市では、2016年から、スマートシティプロジェクト「Smart Cincy(スマートシンシィ)」を行っている。かつて石炭産業で栄えたラストベルト地帯にある同市では、域内のデジタルデバイドの解消が、最大の課題となっているのだ。
2017年3月21日、シンシナティ市の調達部は、「シンシナティ市全域におけるWi-Fi、または有線ブロードバンドシステムの導入:スマートシティ・イニシアチブ・フェーズ1」と題する見積もり依頼書(RFQ:Request For Quotation)を公表し、アイデアの公募を開始した。
シンシナティ市のスマートシティ・プロジェクトでは、官民連携パートナーシップ、レベニューシェア・モデルを通して、以下のような目標を設定している。
- 協議会が採用した無線通信機能ガイドラインで達成される協調的な成功の上に構築する
- 市のインフラストラクチャと公共の回線用地を活用して、市全域のブロードバンドネットワークの構築を可能にする
- 以下のような新しく革新的なアプリケーションとサービスのための、技術中立的なプラットフォームを創設する
- 市の経済成長を刺激する
- 公共の安全を改善する
- 効果的なガバナンスを強化する
- デジタルデバイドをつなぐ
シンシナティ市においても、オープンデータ/オープンガバメント施策を推進しているが、コロンバス市と比較すると、通信インフラやモビリティ機能の整備が遅れているのが現状だ。
そこでシンシナティ市は、優先目標を定めてデータ利活用策を推進しているほか、スマートシティによる地域創生モデル確立をめざして、オハイオ州内のみならずケンタッキー州やインディアナ州の政府機関、産業界、教育界のリーダーとの広域連携も推進している。このような取り組みが、米国の社会課題先進地域となったラストベルトの変革につながるか、今後の動向が注目される。
著者プロフィール:笹原英司(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身、千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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日本クラウドセキュリティアライアンス ビッグデータユーザーワーキンググループ:
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