SXSW 2017観戦記 セキュリティや先端技術をIBMが料理すると(前編):柴崎辰彦の「モノづくりコトづくりを考える」(1/2 ページ)
“IT界のパリコレ”ともいわれる「SXSW 2017」で見聞きした刺激的なあれこれをレポート。今回は、“IBM is making”を掲げたIBMの展示から、音声コントロールでリアルすぎるVR空間や、あらゆるデバイスがゾンビ化するIoT時代ならではの脅威などを紹介します。
この記事は柴崎辰彦氏のブログ「柴崎辰彦の「モノづくりコトづくりを考える」」より転載、編集しています。
これまで日本企業の活躍を紹介してきましたが、今回は、以前から参戦しているグローバルプレイヤー、IBMの展示を紹介します。
“IBM is making”のメッセージが示す通り、「試行中、あるいは提案」という位置付けのものが多かったです。一見すると、くだらないと思えるものも多いのですが、SXSWに展示すれば、参加者からのフィードバックをもらえますし、共同研究に発展する可能性もあり得ます。昔のIBMなら内部で消えていったような研究を、こういう形で試行し、オープンにする点がさすがです。
メインフロアでのデモは、「ENGAGING」「SECURE」「PERSONAL」「HEALTHIER」のテーマに分かれ、屋上ではネットワーキングができるようなBARラウンジが用意されていました。
今回は、「ENGAGING」「SECURE」に関するデモを紹介します。なお、拙い英語力と限られた見学時間の制約もあり、内容はかなりの部分を推察により記載しているのであしからず。
1. オースティンの話題のスポットを捜そう(AUSTIN GEO VIS)
SXSWでは、たくさんのイベントが同時に開かれていて、どこに行くべきか悩ましい。そういった悩みを解決してくれるのがこの「Mapbox」。人々がどこに集まっていて何をしているかが一目で分かり、自分の行く場所を決められます。こういったアプリケーションもIBMの「Bluemix API」を組み合わせればすぐに作ることができるとアピールしています。
恐らくこのデモはこんな仕組みで実現しているのでしょう。
- 各イベント会場に話されていることを「Speech to Text」でテキスト化
- その内容を「Discovery」で解析
- その結果を「Cloudant No SQL DB」に保存
- その情報に対して「Conversation」を使って対話的にアクセスできるようにし、Mapboxで地図上に可視化する
このような複雑な、そしてAI的なシステムを構成するための素材(API)がBluemixにはそろっており、それらを使えば、短期間でアプリケーションを構築できるというわけです。
とかく、Deep Learningなど、個別のアルゴリズムや個別のAPIが注目されがちですが、個々のニーズや課題(今回の場合はSXSWの会場でのイベント探し)に応えるために、それらを適切に選び組み合わせてアプリケーションを作ることが実際に「価値」を生むところであり、重要だと感じさせるデモでした。
2. ヘッドマウントディスプレイでデータ分析ができたら!?(IMMERSIVE INSIGHTS)
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)デバイスを付けると、目の前にニューヨーク市が3Dで表示され、それぞれのビルが使っている電力の大きさが建物の上に棒グラフで映し出されます。タップの動作によってグラフを選択すれば、時間当たりの電力使用量や住所などの、より詳細な情報も見ることができます。
もし、データサイエンティストがこれを使えば、例えば天候と電力使用量との関係などを調べることができるようになります。
ツールは以下の 2つがポイントです。
- 「Data Science Experience」:The IBM Data Science Experienceは、インタラクティブで協調作業のできるクラウドベースのツール。データサイエンティストはデータからインサイトを得るためにいろいろな機能を使うことができる
- 「Bluemix Private Cloud」:プライベートクラウド
この技術は現時点では開発者のみが利用可能。恐らく2017年中には使えるようになるんじゃないかという意見もあります。世の中にあふれる膨大なデータをARによって実社会に結び付け、それによって新しい価値(ここではデータサイエンティストのための分析ツール)を示しています。一緒に考えてほしい。だからこそ“Making”という進行形といえます。
ARやVRというと、そのデバイスに目が向けられがちですが、そこに映し出すデータに着目している点がIBMらしいです。どんなデータをどこで、どんなタイミングで出すか、ということが適切にできなければ、ARは、ちょっと面白いだけで終わってしまいます。
データと実社会のリンクを実現することにより、ARだからこそできる価値を生み出している点が、このデモのユニークなところなのです。
3. VR空間を音声でコントロールしよう!(SPEECH SANDBOX)
VRの空間では操作が限定されるので、そういう空間でこそ音声インタフェースが有用となるのではないか? という仮説をもとにこんなもの作ってみましたがどうでしょうか? と。
VRは圧倒的に画像とサウンド中心ですが、そのVR空間に音声でインタラクトできたら面白いよね! という提案。「何ができるか」はIBMも模索中。そのうち手で触るような動作も入ってくるかもしれません。
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