仕事ができないだけじゃない PC機内持ち込み禁止のリスク:半径300メートルのIT(2/2 ページ)
米国政府がノートPCに準じる機器の機内持ちこみ禁止施策を「全ての米国直行便」に拡大する可能性を示唆しています。もしそうなったら、どんな対策をすればいいのでしょうか。
さらなる問題はデータの漏えい、ならば……
これまでなら、ずっと手元に置くことができたノートPCが、客室内に持ち込めないことで盗難や紛失のリスクにさらされることになります。そうなると、もう少し「ノートPC内のデータ」を気にする必要があるかもしれません。
先ほど対策として挙げたのは、「ノートPC内にあるデータにロックをかける」という手法であり、それではまだリスクが大きいと考えるなら、“そもそも機内にデータを持ち込まない”ことも考えるべきかもしれません。
私の場合、ファイルの保存はDropbox/iCloud(アップル)、メモはEvernoteを利用しています。これらのサービスを使えば、通信環境さえあればクラウドに接続することでデータを復元できます。ですから、面倒ではありますが空港で「データを消去」し、米国内でWi-Fi環境につながったら「データを再ダウンロード」することで、盗難、紛失リスクをさらに下げることも可能です。
Dropboxの場合、メニューから「このDropboxのリンクを解除」を押し、ノートPCとDropboxとのつながりを解除した後、ノートPC内に残っているDropboxフォルダを削除します。渡航後、もう一度DropboxをノートPCとリンクすると、もともと存在していたファイルがクラウドから降りてくるはずです。
Evernoteはアプリからログオフしておきましょう(厳密にはローカルにノートのデータベースファイルが残っているので、削除が必要かもしれません)。
ここまでやることを考えると、もはや企業は海外出張用に、「OSとVPN接続、最低限のアプリのみを入れた海外出張専用ノートPC」を用意しておく必要があるかもしれません。機内へのPC持ち込み禁止が日本のビジネスパーソンを困惑させる前に、検討を始めてみてもいいでしょう。
個人的には、「タブレットはダメでも、スマートフォンの持ち込みは許されている」ことから、もしかしたらノートPCの運用を無理に変えるより、「仕事も全てスマートフォンでできる」よう、自分を改造した方が早いかもしれないと思い始めています。
スマートフォンを使いこなしているデジタルネイティブな若い人たちにとっては、その方が合理的かもしれませんね。
著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
筆者より:
2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。
これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。皆さんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。
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