手のひらサイズで330Tバイト――磁気テープストレージの新技術、ソニーとIBMが開発
ソニーとIBMチューリッヒ研究所は、面記録密度201Gビット/inch2の磁気テープストレージを実現する技術を共同開発した。
ソニーとIBMチューリッヒ研究所は8月2日、磁気テープストレージメディアとして業界最高となる面記録密度201Gビット/平方インチ(Gbit/inch2)を達成する技術を開発したと発表した。
これは、「IBM TS1155 テープ・ドライブ」(JDカートリッジ、非圧縮)をはじめとした従来の磁気テープストレージメディアの面記録密度9.6Gビット/平方インチの約20倍になる。これは、約330TBの非圧縮データを、手のひらに収まるサイズのテープカートリッジ1巻に記録することに相当するという。330TBのデータとは、書籍3億3000万冊分のテキストに相当する。
この磁気テープストレージ技術は、ソニーストレージメディアソリューションズが開発した潤滑剤などを採用した磁気テープ技術と、IBMチューリッヒ研究所が開発した記録・再生用ヘッド、サーボ制御技術、信号処理アルゴリズムなどを組み合わせて実現したという。
テープストレージメディアの面記録密度を向上するには、一般的に、磁気テープと磁気ヘッドの距離(スペーシング)を狭くすることが重要になるが、距離の縮小に伴い、テープ表面と磁気ヘッドの接点の摩擦が上昇する傾向があるという。高速で高容量な記録・再生を行うには、摩擦を抑え、磁気ヘッドがテープ表面を滑らかに走行できるようにする必要がある。
ソニーは今回、テープ表面と磁気ヘッドの間に塗布する潤滑剤を開発。テープ表面と磁気ヘッドの走行摩擦を抑える低摩擦特性と、テープ磁性面と潤滑剤の接合を維持するための高耐久性を実現した。
また、一般的に磁気テープの成膜時は、製造装置から発生する不純物ガスの影響で磁性膜の結晶配向の乱れや大きさのばらつきが生じるが、ソニーは、不純物ガスの発生を抑え、磁性粒子(グレイン)の大きさが平均7ナノメートルという、ナノグレイン(Nano grain)磁性膜を長尺成膜する技術を開発。
ソニーは、この技術によって、1000メートルを超えるテープ長が必要なテープストレージカートリッジ製造の基礎となるプロセス技術を確立したとしている。今後、同テープ技術を採用した大容量データ記録が可能な次世代テープストレージメディアの商品化を目指す考えだ。
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