アクサ生命が気付いた「デジタル変革」の核心――それは人とITの“共存”:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(1/3 ページ)
2010年ごろから「デジタルトランスフォーメーション(変革)」に挑んでいるアクサ生命。取り組みの中で気が付いたのは、ツールだけを変えても会社は変わらないということだ。人とテクノロジー、両者を調和させるバランスが重要なのだという。
企業のデジタル変革に注目が集まる中、2010年ごろからその取り組みを続けてきたアクサ生命。2014年には変革を指揮する部署「トランスフォーメーションオフィス」を新設している。その責任者を務める不動奈緒美さんは、米国でソフトウェア会社に勤めるなど、さまざまな会社を渡り歩いてきた経歴を持つ。
- インタビュー前編はこちら→アクサ生命の「デジタル変革」を託された女性、その異色のキャリア
アクサ生命に入ってからは、ITインフラ運用やファイナンス運用、情報セキュリティ管理といった職務を歴任。「保険会社でITシステムを担当するというのは、ビジネスを理解するということ。また、ビジネスもテクノロジーを最大限に活用することが重要」という考えのもと、ITとビジネスの橋渡しをする“指揮者”の役割を担っている。
デジタルトランスフォーメーションには、ビジネスに合わせたテクノロジーと人の在り方、業務プロセス、働き方という全ての要素が同じペース、リズムで変わっていくことが重要――不動さんはこのように話す。
「ITのバックグラウンドを持っているからこそ思うのは、人とテクノロジーの“共存”が重要だということです。スマートフォンやAIなど、次世代の技術が登場する一方で、社内にはまだレガシーなシステムやプロセスも残っています。遅れていると思う人もいるかもしれませんが、テクノロジーだけが先に進んでも、果たして人はそれを使いこなせるのか、という問題があります」(不動さん)
ツールだけが変わっても、会社が変わるわけではない
AXAグループ全体でデジタル化への取り組みが加速し始めた2010年ごろは、iPhoneが普及し始め、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSも登場し、社会全体がデジタル化へかじを切った時期だ。ビジネスの現場もクラウドが登場し、多くの企業がIT化を進めることになった。しかし、アクサ生命は「ツールだけが変わっても、働き方や人の意識が変わらないと会社は変わらない」ということに気が付いた。
生命保険は、1人のユーザーが数日や数週間おきに触れるサービスではない。小売業や外食産業、同じ金融業でも銀行などと異なり、顧客と接する機会が極端に少なく、要望に対応したとしても、ユーザー視点ではその成果を実感しにくい。それが、変革のスピードに差が出る原因だと不動さんは指摘する。
「とはいえ、お客さまのリテラシーは進んでいます。今はもう60歳以上でもスマートフォンを持ち、使いこなしている方も多い。これから社会やお客さまのニーズが変わっていくときに、サービスや会社はどう変わっていくのか。そして、変わるためにどうあるべきかを考えたとき、デジタルだけではなく、もっと全体的な変革を考えよう、と方針を変えたのです」(不動さん)
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企業のデジタル変革に注目が集まる中、2010年ごろからその取り組みを続けてきた企業がアクサ生命だ。2014年に変革を指揮する部署として設置した「トランスフォーメーションオフィス」でトップを務める不動さんは、長く米国に在住していたなど、異色のキャリアを持っている。 - NECから温泉旅館へ転身――元エンジニアが挑む、老舗ホテルのIT化
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