デジタル教科書の学習履歴データを指導や個別学習に活用 東北大、MSなどが実証研究
東北大学と日本マイクロソフトなどが、デジタル教科書の普及を見据え、学習履歴データを分析し、指導や個別学習に生かす仕組みづくりを目的に実証研究を行う。
東北大学、東京書籍、ACCESS、日本マイクロソフトは、「小・中学校におけるデジタル教科書 学習履歴データ収集と分析」をテーマとする実証研究を、東京都荒川区立第三峡田小学校と荒川区立第三中学校で実施する。期間は2017年10月〜2018年3月末で、成果を2018年4月をめどに発表する予定。
文部科学省は、2016年12月16日に「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議 最終まとめ」を公表しており、2020年からデジタル教科書の導入が進むと予想されている。デジタル教科書の特徴として、主たる教材である紙の教科書を基本とした学習コンテンツであり、音声による読み上げや、動画による視覚的な説明、文字や図版の拡大と縮小などによって理解のしやすさを向上することが求められる。
また「いつ、どのページをめくったのか」「どの部分を注視したのか」「何を書き込んだのか」といったデータを取得し、活用することで、学習履歴に基づいた的確なフィードバックや継続的な指導を行うことが期待される。しかし、現在のデジタル教科書を用いた学習では、そういった取り組みはまだ行われていない。
今回の実証研究では、東北大学 大学院情報科学研究科 堀田 龍也教授の監修の下、デジタル教科書の操作時に得られる学習履歴データの収集、分析、活用法などを検証する。学習履歴データの収集では、東京書籍のデジタル教科書(プロトタイプ)コンテンツが載ったACCESSのデジタル教科書、教材用ビュワー「Lentrance Reader」を機能拡張し、学習履歴データの効果的な取得方法について研究する。
また、デジタル教科書の普及により、学習履歴データが蓄積されるようになると、データ量は膨大なものになるうえ、学校や地域を超えてデータを活用するため、クラウドサービスの活用を含めたデータの安全な蓄積方法について研究する。
学習履歴データの分析では、蓄積された学習履歴データを活用し、個々の学習者に最適化された指導を行うために必要なデータ分析手法やレポート形式を研究する。これらのデータ分析やレポート作成の自動化によって、教員の負担軽減と児童、生徒と触れ合う時間の増加を実現する狙いだ。
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