マクラーレン・ホンダ、F1日本GPの戦略データ送信にSD-WAN導入
マクラーレン・ホンダとNTT Comが、鈴鹿サーキットと英国マクラーレン・ホンダ本拠地間をSD-WANで接続し、戦略データ送信に活用する。
Formula 1(F1)レーシングチームMcLaren-Honda(マクラーレン・ホンダ)とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、2017年10月6日から開幕する「Formula 1日本グランプリ」で、鈴鹿サーキットと英国ロンドン郊外のウォーキングにあるマクラーレン・テクノロジー・センターを結ぶネットワーク(トラックサイドネットワーク)に、NTT ComのSDx技術を導入した。
マクラーレン・ホンダは、レース戦略の立案に重要なテレメトリーデータが今後増大することを想定し、日英間にSD-WAN環境を構築。テレメトリーデータの送受信を通じて、その伝達速度と品質の有用性を検証する。
テレメトリーデータとは、レース会場の気象情報や、レース車両に搭載した200個以上のセンサー、カメラが取得するエンジン回転数、ブレーキ圧、燃料の残量、タイヤの空気圧、走行状態の映像などのデータのこと。情報量は1レースあたり約100GBにも及ぶ。
現代のF1は、テレメトリーデータを的確かつ瞬時にPITガレージと本社の技術チームの間で共有し、迅速なレースマネジメントを展開することで、チームのパフォーマンスを向上させているという。
今回、マクラーレン・ホンダが、既存のトラックサイドネットワークに加えて導入したのは、NTT ComのSDx技術を活用した広帯域ネットワーク(SD-WAN)。NFV基盤とSD-Exchangeを介して、鈴鹿サーキットと英国マクラーレン・テクノロジー・センター間を結び、大容量データ送信時の安全性や、迅速性、効率性、レース中の高度な戦略立案への貢献度などを検証する。
SD-WANは、既存のMPLS回線と、インターネット回線などのようにレース会場でチームごとに敷設可能な回線(補完回線)を柔軟に組み合わせることができるため、帯域拡張と、優先順位に応じた効率的なデータ伝送を実現する。
さらに、これまでMPLS回線経由で接続していたPITガレージのインターネット回線やパドックのゲスト用Wi-Fi回線などを、補完回線経由に変更することで、MPLS回線に重要データを効率的に伝送することを目指す。
ネットワーク機器の機能を汎用サーバの仮想化基盤上でソフトウェア(仮想マシン)として実装するNFV基盤では、データを遅延なく届けるためのWANアクセラレータ機能や、セキュリティを担保するUTM、Webプロキシ機能などをクラウド上で実装。これにより、SD-WAN上のセキュアで迅速な通信を実現するとともに、世界各地で年間20戦開催されるレース期間限定のネットワーク環境を構築、撤去する際にも、その稼働を簡略化でき、時間とコストを削減できるとしている。
鈴鹿サーキットとマクラーレン・ホンダ本拠地間の接続には、SD-Exchangeを活用。鈴鹿サーキットの近隣から、英国マクラーレン・ホンダ本拠地の近くまで、NTT Comのグローバルな高帯域インフラを経由するため、通常のインターネット接続時と比べて大容量データを瞬時に伝送できるという。
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