AIやビッグデータを使ったサービス開発で最大17%の節税も 「中小企業等経営強化法」活用のススメ:目からうろこの行政サポート活用術(2/2 ページ)
中小企業の研究開発を支援する税制や省庁主導の補助金制度を使わない手はない。企業の研究開発のコストが節税対象になる「研究開発税制」と、中小企業の技術開発を支援する「中小企業技術革新制度(SBIR制度)」について紹介する。
中小企業の技術開発を支援する「中小企業技術革新制度(SBIR制度)」
中小企業の研究開発を応援するもう1つの制度を紹介しよう。「中小企業技術革新制度(SBIR制度)」という、中小企業による研究開発とその成果の事業化を一貫して支援するもの。研究開発のための補助金や委託費などを「特定補助金等」として指定しており、それらの交付を受けて研究開発を行うことができる。また、その成果を事業化する際にも、例えば事業化がスムーズにいくように低利の融資を受けられるなど、さまざまな支援策が設けられている。
SBIR制度は、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省の7省が参加する省庁横断的な制度で、各省庁や関連団体から交付される特定補助金等にさまざまな事業を指定している。詳細については、下記のサイトを参考にしてほしい。
2017年度分については7月27日に閣議決定され、下記の中小企業庁のサイトなどで発表されている。
中小企業庁「中小企業技術革新制度について〜平成29年度予算の特定補助金等に指定された事業を公表します〜」。サイト内の「平成29年度予算における特定補助金等の事業一覧(pdf)」で、特定補助金等の指定事業一覧を確認できる。
SBIR制度の対象となっているICTがらみの案件をいくつか紹介しておこう。
- ICTイノベーション創出チャレンジプロダクトに係る補助金(総務省から交付する特定補助金等)
- グローバルコミュニケーション計画の推進―多言語音声翻訳技術の研究開発及び社会実証―に係る依託費(総務省から交付する特定補助金等)
- 次世代人工知能技術の研究開発(総務省から交付する特定補助金等)
- ICTを利用した次世代スマート沿岸漁業技術開発事業に係る依託費(農林水産省から交付する特定補助金等)
特定補助金等を受けて新規事業を起こすとは、どんな感じなのか。J-net21には、この制度を活用した企業の事例が掲載されているので、参考にしてほしい。ここでは、そのうち2つを紹介しておこう。
「SBIRの制度では、日本政策金融公庫の貸付利率が最大で−0.9%になりますが、これは、アーリーステージのベンチャーにとっては、結構、ありがたいと思います。また、運転資金は向こう7年分の貸し付けを受けることができると聞きました」(J-net21サイト掲載の事例インタビューから抜粋)
「中小企業を対象にした補助金はさまざまなものがありますが、労務費が対象になるものは珍しく、大変ありがたかったです。開発の1年目に1400万円、2年目に900万円、合計2300万円の補助金をいただいています。総開発費は3600万円で、そのほとんどがシステムエンジニアの人件費でした」(J-net21サイト掲載の事例インタビューから抜粋)
研究開発は、中小企業が他社との差別化を図る上で重要なポイント。開発できる能力も重要だが、税制や補助金制度を上手に使うのも、その他大勢から抜け出すポイントだ。
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