弥生の「業務3.0」で読み解く、中小企業の業務を進化させるIT活用:Weekly Memo(1/2 ページ)
日本の事業者の9割近くを占める中小企業。その業務形態はIT化が進むことでどう変わっていくのか。この分野向けの会計ソフトで実績を持つ弥生が打ち出したビジョンを基に考察したい。
弥生が提唱する中小企業の新業務形態「業務3.0」とは
中小企業向けに会計をはじめとした業務ソフトウェアを提供する弥生が先頃、デスクトップ版の最新バージョン「弥生18シリーズ」を発表した。「弥生会計18」「弥生給与18」「弥生販売18」などの個別パッケージを10月20日に発売する。
弥生シリーズは1987年に「青色申告会計 弥生」が誕生して以来、2017年で30周年を迎えた。ユーザー層は年商10億円未満を中心とした中小企業や個人事業主で、その数は160万件。この分野では圧倒的なシェアを占めている。
そんな日本の中小企業の会計処理を30年にわたって支えてきた弥生が、中小企業のこれからの業務処理の在り方について、「業務3.0」というビジョンを提唱している。
今回発表した弥生18シリーズはその要素を取り入れた新製品だが、製品内容については発表資料をご覧いただくとして、ここでは発表会見で同社の岡本浩一郎社長が説明した業務3.0の考え方について取り上げたい。
まず、図1はこれまでの業務形態、すなわち「業務2.0」を表したものである。ちなみに「業務1.0」は全て手作業と電卓で行われてきた段階で、業務2.0からは会計ソフトが登場した形になる。岡本氏によると、「業務2.0は、集計は自動化されたが、入力は手作業が多く残ったまま。データの扱いについても、事業者内での業務間連携、さらにはステークホルダーとの連携がほとんど紙ベースのままとなっている」という。この業務2.0が、まさしく現状である。
そこで、これからの業務形態、すなわち業務3.0を表したのが図2である。岡本氏によると、業務3.0のコンセプトを表すキーワードは「スマート」と「コネクテッド」。スマートは事業者の業務をクラウドや人工知能(AI)技術によって自動化・効率化することで、業務2.0に対して入力も自動化を図っていくことを意味している。また、コネクテッドは事業者内外をクラウドやAPIでつなげて効率化を図っていくことだ。
これらによって、ITの力で業務プロセス全体を自動化・効率化していこうというのが、現状から進化した業務3.0の考え方である。
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