「情報通信白書」から読み解く日本のICT産業の実態:Weekly Memo(1/2 ページ)
総務省が先頃、日本のICT産業における現状や課題をまとめた「平成29年度版 情報通信白書」を公表した。その中から、特に企業のICT活用について筆者が気になった点を取り上げたい。
IoTの進展で2030年にGDP132兆円押し上げへ
総務省が毎年、この時期に刊行する「情報通信白書」は、今回で45回目を数える。国内のICT関連統計資料として最も長期かつ広範囲に網羅しており、一部を除いてオープンデータとして利用できるようになっている。
最新版では「データ主導経済と社会変革」と題した特集が組まれ、「スマートフォン経済の現在と将来」「ビッグデータ利活用元年の到来」「第4次産業革命がもたらす変革」「社会的課題解決に役立つICT利活用」「熊本地震とICT利活用」といった話題とともに、ICTの産業や政策についての動向がまとめられている。
本コラムではその中から、今回の白書のトップメッセージと、企業のICT活用について筆者が気になった点を取り上げたい。ちなみに、前回の白書もほぼ1年前の本コラムで取り上げたので、参照していただきたい。
まず、最新版のトップメッセージと目されるのは、IoT(Internet of Things)化によるGDP(国内総生産)へのインパクトだ。
白書では、図1のようにIoT化や企業改革が進展すれば、2030年の実質GDPは725兆円に拡大すると試算。内閣府が推計したベースシナリオを39%引き上げて132兆円の押し上げ効果があると予測している。試算の内容については図1の下段をご覧いただくとして、つまりはIoT化がいかにGDPに大きな影響をもたらすかを物語っている。
GDPの話が出たので、全産業における情報通信産業の実質GDPの割合を記しておくと、2015年度で9.3%を占めた。これは「商業」「不動産」に次ぐ規模で、その他の産業セクターと比べて大きなポジションを占めている。せっかくなので、情報通信産業の市場規模を記しておくと、2015年度で95.7兆円。これは全産業の9.9%、ほぼ1割を占めて最大規模となっている(図2)。
ちなみに、白書によると情報通信産業は、通信業、放送業、情報サービス業、インターネット附随サービス業、映像・音声・文字情報制作業、情報通信関連製造業、情報通信関連サービス業、情報通信関連建設業、研究の9領域からなるとしている。
かなり幅広い領域をカバーした形だが、要は全体のほぼ1割を占めて最大級の影響力を持つ産業だと、白書は語っている。
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