「情報通信白書」から読み解く日本のICT産業の実態:Weekly Memo(2/2 ページ)
総務省が先頃、日本のICT産業における現状や課題をまとめた「平成29年度版 情報通信白書」を公表した。その中から、特に企業のICT活用について筆者が気になった点を取り上げたい。
白書にみる「企業におけるICT活用の課題」
次に、企業におけるICT活用の現状について、白書から興味深い情報を取り上げよう。
まず、図3は企業におけるICT端末、システム、サービスの導入状況を示している。この図について、白書では「企業におけるICT端末の導入は進んでいる」と記してあるだけだが、むしろ「社用のスマートフォンやタブレットはこんな割合か」「およそ4分の1の企業にはシステムがない」「分析はほとんどの企業がまだ手掛けていない」といった点が気になる。
図4は、業務へのシステム導入状況である。白書では「経理・会計、給与・人事といった間接系の業務での導入率が高い」などと記してあるだけだが、日本企業の業務へのシステム導入はこれが実態だと受け止めるべきだろう。中小企業が増えると、この割合がもっと下がるかもしれない。日本のIT化を底上げするためにも、この現実を改めて認識する必要がある。
図5は、経営課題解決にICTを利活用している企業の比率を「三大都市圏」と「地方圏」に分けて示したものである。白書では「全般的に三大都市圏の企業のほうが経営課題解決におけるICTの利活用率は高い」とし、特に「社内情報の活用・共有の活発化」「管理の高度化」「経験やノウハウのデジタル化」において差が大きかったとしている。この図については、三大都市圏と地方圏の比較もさることながら、分析そのものの仕方をチェックしておきたいところだ。
図6は、図5において経営課題解決にICTを利活用した従業員数300人以下の企業のうち、効果が得られた企業の比率を示したものだ。白書では「ICTの利活用率では三大都市圏のほうが高かったものの、ICTを利活用することによって効果を得ている企業の比率は地方圏のほうが高い」とし、特に「生産性」「経営改革」「人材力」に関する経営課題において、効果を得ている企業が多くなっているとしている。
そのうえで、「ICTの利活用に取り組むことによる効果は、地方圏のほうが享受しやすいとも言え、地方圏でのICTの利活用がより進展することによって、生産性向上などの社会的課題の解決につながり得るものと考えられる」と記されている。
図6については、なぜ、企業規模の違いで比率に差が出てきたのか、それぞれの要件ごとに検証する必要がありそうだ。
以上、筆者が気になる点を取り上げてきたが、冒頭でも述べた通り、情報通信白書はICTに関する国内最大の統計資料でもあるので、ぜひ夏休みの機会に目を通してみていただきたい。
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