弥生の「業務3.0」で読み解く、中小企業の業務を進化させるIT活用:Weekly Memo(2/2 ページ)
日本の事業者の9割近くを占める中小企業。その業務形態はIT化が進むことでどう変わっていくのか。この分野向けの会計ソフトで実績を持つ弥生が打ち出したビジョンを基に考察したい。
中小企業のIT活用のさらなる促進に向けて
その中で、会計業務だけを取り上げると、進化のプロセスは図3のようになる。取引発生から試算表作成までのプロセスにおいて、「会計業務1.0」では全て手書きと電卓で行われていたが、「会計業務2.0」では弥生会計などのソフトが登場し、データの転記と集計が自動化されるようになった。そして「会計業務3.0」では会計ソフトの進化により、データの取込や仕訳も自動化されるようになる。岡本氏は「業務3.0の中でも会計業務3.0がいち早く立ち上がりつつある」と手応えを感じているようだ。
さらに、業務3.0の考え方を会計から商取引、給与・労務の領域にも広げたのが図4である。会計業務3.0は、金融機関から入出金データを取り込んで記帳し試算表を作成して会計事務所で決算・申告を行う。商取引3.0は、取引先との間で受発注、納品・請求、支払といったプロセスを紙ベースから電子化し、自動化していく。給与・労務業務3.0は従業員からの各種届け出、勤怠登録、年末調整申告、及び会計事務所での年末調整といったプロセスを電子化し、自動化していく形となる。
岡本氏は、こうした業務3.0においては、事業者にとってステークホルダーとの間で業務データを共有してやりとりできるようにするために、クラウドを活用することが重要なポイントになると指摘。クラウドを活用すれば、業務データをその上でセキュアに一元管理できるようになる。一方、業務ソフト自体はユーザーの使用状況を踏まえて、クラウドに限らず、デスクトップやスマートフォンでも利用できるように「選択肢」があることも重要だという。
さらに、同氏は業務3.0の先をにらみ、蓄積されたデータとAIを活用し、顧客の事業を能動的に支援することを目指すとしている。例えば、業務の予定を能動的に案内する機能や、経営分析に基づくアラートの発信、融資などの事業支援サービスの提供などを、弥生として展開していく構えだ。
そのうえで同氏は、「弥生シリーズは、業務効率化を追求し、業務3.0の実現を目指していく。そして、弥生としては事業支援サービスの開発も一層推進し、“中小企業の事業コンシェルジュ”になれるよう注力していく」と語った。
業務3.0の考え方は正しい方向を目指しているだろう。ただ、中小企業ではITリテラシーもさることながら、さまざまな商取引の形態などもあり、例えば入力の自動化を突き詰めるのは難しい面もある。そのあたりを岡本氏に聞いてみたところ、「入力については、実際には自動化と半自動化の間になるだろう。それぞれのニーズに対応しながらも自動化による効率や利便性の向上には注力していきたい」とのことだった。
日本の中小企業のIT活用をさらに促進するためにも、業務3.0の今後の進展を大いに注目しておきたい。
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