全てのOSSテクノロジーをAzure上で 加速するMicrosoftのオープンソース戦略:Microsoft Focus(3/3 ページ)
Microsoftとオープンソースソフトウェア(OSS)の距離が急速に近づいている。デジタル変革を目指す企業の支援策としてオープンソース戦略を加速させるMicrosoftの狙いとは。
OSSに4領域からアプローチ
Microsoftでは、OSSに対して、「Enable」「Integrate」「Release」「Contribute」という4つの領域からアプローチを行っているという。
「Enable」では、Dockerなど幅広い開発環境への対応により、場所に制限されることなくクラウドに移行しやすいオープンなプラットフォームを提供し、「Integrate」では、Hadoopへの対応をはじめとして、主要なエコシステムの統合やアジリティの向上、一貫したOSSクラウドサービスの提供を目指す。
また、「Release」では、SQL Server 2017が、Windows環境だけでなく、「Red hat」をはじめとするLinux上で動作することや、「Docker」をサポートしたことに触れながら、「Microsoftのポートフォリオに対して、強力なOSSエコシステムがサポートできる環境を提供する」と述べた。
2017年5月からは、「Azure Database for MySQL」と「Azure Database for PostgreSQL」のプレビュー版の提供をそれぞれ開始しており、2018年には、Linuxのサーバ上で、Windowsのコンテナを動作させるといったことも予定している。また、「Contribute」は、コミュニティーへの貢献を指し、これによって、パートナーやユーザーにさまざまな体験を提供できるとした。
「いかにMicrosoftの新たなテクノロジーをOSSコミュニティーに使ってもらうかが重要である。ここに継続的に投資をしていくことになる」とする。
国内ではOSS Champによるコミュニティー支援も
日本マイクロソフトも、OSSへの取り組みをさらに加速させる計画だ。
日本マイクロソフトの浅野本部長は、製造、金融、流通・小売、政府・自治体、医療の5つの重点業種を対象に、OSSを対象にした20人の専任部門を設置したり、構築ナレッジを横展開したりする取り組みを開始するとし、「製造業ではIoTの領域において、あるいは金融ではチャットbotの活用などでOSSを活用する動きが顕著であり、ビッグデータやAIの領域においても、OSSをベースにしたユースケースを紹介していきたい。また、日本マイクロソフト社内には、OSSの各領域において「OSS Champ」と呼ぶスペシャリストを約50人育成しており、OSSコミュニティーに貢献できる体制を整えている。さらに、日本マイクロソフトでは、年間400回以上のイベント、セミナー、トレーニング、ハンズオンラボを開催しているが、そのうちの半分以上となる200回以上が、OSSに関するものであり、約100社のパートナーとPoC支援を行っているところだ」と述べた。
11月17日に、東京・六本木の東京ミッドタウンで開催されたConnect(); Japan 2017では、10個のセッションが用意されたが、そのなかでも、「Azure DB for MySQL/PostgreSQL」など、日本におけるMicrosoftのOSSへの取り組みに関して多くの時間が割かれており、参加した480人の開発者たちも、日本マイクロソフトのOSS戦略に高い関心を寄せていた。
MicrosoftとOSSの距離感は年を追うごとに近づいているのは確かだ。
関連記事
- 連載:「Microsoft Focus」記事一覧
- メトロ、中小企業のIT人材不足を解決支援する「情シス支援サービス」を月額3万円から提供
メトロは、中小企業におけるIT人材不足の問題を解決支援する「情シス支援サービス」を発表した。OSS(オープンソースソフトウェア)を活用したシステム導入・運用の支援を、月額3万円から提供する。 - オープンソースのイノベーションをデータ分析にいち早く取り込む――Think Bigがテラデータにもたらす変化とは
日本テラデータが、オープンソースソフトウェアの扱いにたけたThink Bigと協力して新たなビッグデータアナリティクスサービスを提供する。それぞれに強みを持つ両社の融合で生まれてくるものとは。 - オープンソースをサポートする「OpenStandiaモデル」
これからのSIerが取り組むべき「差別化」戦略の有効な手段であるオープンソースの活用について、オープンソースビジネスを5つに分類して考察。今回は、既存のOSS(オープンソースソフトウェア)をサポートするビジネス「OpenStandiaモデル」について解説します。 - エンタープライズオープンソース製品導入戦略ガイド
「Windows」や「UNIX」「Oracle Database」のスキルは今や「レガシー」化したという認識が、IT業界で広がっている。新興企業から大手電子商取引サイトまで、オープンソースソフトウェア(OSS)の利用が拡大し、OSS関連スキルの需要が高まっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.