「DevOps」から「SalesEngs」へ――2018年、DevOpsの成功に必要なこと:夢物語で終わらせない「DevOps」(5)(2/3 ページ)
2018年は、DevOpsがエンタープライズITの世界にも浸透する年になると考えています。しかし、それが成功するためには、DevOpsという考え方そのものを大きく変えなければならないかもしれません。
要するに、売れるのかどうか分からない不確実なサービスに対して、積極的なリソース投資ができない、という経営者視点を打破しなければならないのです。このような課題に対しては、一見DevOpsの迅速な改善サイクルが生かせるようにも思えますが、エンタープライズITの世界において、スムーズに導入が進まないのはなぜでしょうか。
市場のフィードバックを反映しやすくする「Canary Release」
例えば、DevOpsにおけるカイゼン手法の1つに「Canary Release(カナリアリリース)」というリリース方法があります。これは、一部の先行顧客だけに、実際のサービスを提供(リリース)し、「そのサービスがもうかるのか」「顧客がどのように利用してくれるのか」「価値をスケールできるのか」といった指標を大量データの中から洗い出し、徐々にサービスに反映する方法です。
これを導入すると、ビジネスの失敗(リスク)や投資を最小限に抑え、市場のフィードバックを反映しながら、ビジネスバリューを高めることができるのですが、エンタープライズITの世界では、残念ながらまだまだ浸透していません。
Canary Releaseで最も難しいのは、先行顧客に提供したサービスのフィードバックデータを分析するというアクションです。これは、技術的にバグがないかといったレベルの話ではありません。
顧客に対して、そのサービスが価値あるものなのかを測る指標を見つけ、それに対するアクションの検討および、実施までのサイクルを回さなければいけません。そのため、エンジニアだけがデータ分析を行うのではなく、マーケティングや企画部門、そして営業部門を巻き込んで、顧客への訴求アプローチを考える必要があります。
ところが、エンタープライズITにおいては、他の組織を巻き込んで、顧客動向を分析することが一番難しいのです。システム開発だけの課題ならば、新機能を開発したり、運用プロセスを修正したりすることで対応できますが、サービスの改善となると営業や企画、マーケティングと意思疎通を図らなければいけません。特に昨日とは違ったサービスを顧客へ提供するようなアジャイル文化は、既存の日本企業では、受け入れられにくいのも否めません。
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