2台のロボットが自然な会話を誘導――雑談を交えながら知識を伝える新感覚の対話AI NTTが開発
NTTは、雑談を通じてユーザーに対話への興味を持ってもらいながら、知識を伝達する新感覚の対話AIを開発。2台のロボットの連携により、話題を適切に制御しながら、雑談と質問応答を違和感なく行き来することで、自然な会話の流れを実現している。
日本電信電話(NTT)は2018年1月31日、雑談を通じてユーザーに対話への興味を持たせながら、その興味に応じて知識を伝達する新感覚の対話AI(人工知能)を開発したと発表した。
この対話AIは、NTTグループのAI関連技術「corevo」の研究開発の一環として、NTTがこれまでに培ってきた「複数ロボット連携による雑談制御技術」を応用して開発。2台のロボットを連携させて、話題を適切にコントロールしながら、雑談と質問応答を違和感なく行き来できる対話を実現した。雑談でユーザーに興味を持ってもらいながら、知識を伝達する対話ができるという。
従来の対話AIを搭載したガイドロボットでは、ユーザーからの質問に回答する質問応答機能などのように、要求に基づいて知識を伝える技術が開発の中心となっていた。これに対して、ガイドする物事自体や対話そのものに興味を持ってもらうためには、雑談を通じてユーザーと打ち解ける機能が重要となる。
また、従来の雑談対話を行うAIでは、幅広い話題の雑談を実現するため、浅く広い対話知識を基にしており、個別の話題に対応した知識が十分ではないため、しばしば不自然な発話や対話が破綻する場合があった。
NTTでは、対話を通してユーザーの満足度を高めたり、興味や思考を引き出したりする雑談対話AIの実現に取り組んでおり、その中で、人の感じ方を利用することで対話の満足度を向上させる複数ロボット連携による雑談制御技術を開発。複数のロボットが連携して対話を進めることで、人に与える不自然さを軽減しつつ、対話が破綻しないように話題を制御できるという。
複数ロボット連携による話題の自然な制御。複数のロボット間での対話や話者の切り替えにより、ユーザーに自由な発話を許容しつつ、話題を質問応答可能な範囲に自然に限定。ロボット応答が少しずれた場合でも自然に話題を遷移し印象悪化を回避
今回、複数ロボット連携による雑談技術と、質問に答える質問応答技術を組み合わせることで、雑談と質問応答との間を違和感なく行き来できる対話を実現。複数ロボット連携による話題制御を活用して話題を限定することで、その話題に対応した詳細な対話知識の構築が可能になった。この対話知識を基に「雑談対話AI」と「質問応答AI」を動作させることで、両者の間を双方向にかつ連続的に行き来し、雑談でユーザーに興味を持たせながら、知識を伝達する対話を実現した。
なお、今回開発した対話AIの実証実験は、2018年2月1日から28日に京都市動物園で実施される予定だ。動物園での対話を対象に、対話AIの知識の幅を動物に関する事柄に自然に限定することで、違和感のない対話を実現するという。来園者との対話を通して対話AIの有用性を検証し、対話AIの研究開発に寄与するデータの収集を行う。
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