人員削減に踏み込むNECは成長軌道に回帰できるか:Weekly Memo(2/2 ページ)
NECが2020年度までの新たな中期経営計画を発表した。長らく厳しい経営状況が続く同社だが、果たして成長軌道に回帰することができるか。
顧客に信頼されるサービス型ビジネスを目指せ
新中計のさらに詳しい内容については発表資料をご覧いただくとして、ここで成長の実現における国内事業のビジネスモデルの変革について、もう少し掘り下げておきたい。新野氏は国内事業について次のように説明した。
「これまで当社のビジネスは個別SIが中心だったが、このビジネスモデルでは収益性において限界がある。今後は需要の変化やエネルギーの効率利用などAIやIoTを活用した、これまでにないICTの適用領域が拡大していくと考えている。当社はこれらの動きを機会と捉えてお客さまとともに新しい領域を開拓し、それをサービス型で提供していきたい。その実現のためにサービスの共通業務プラットフォームの整備や人材の育成、お客さまとの共創プログラムを整備し強化していきたい」
図3が新野氏の発言のポイントを図示したものである。要は、NECのAIやIoTの技術基盤を活用した共通業務プラットフォームを整備し、それを基にサービス型ビジネスを展開することを表したものだ。
図3のサービス型ビジネスの展開のところには、デジタルトランスフォーメーション(DX)専任部隊の増強についても記されている。これについては、2017年11月13日掲載の本コラム「デジタルトランスフォーメーションとは何か NECの製品体系が示す、その正体」を参照いただきたい。このDXの製品体系も共通業務プラットフォームを支えている形だ。
筆者はこのサービス型ビジネスの展開が、NECの成長軌道への回帰のカギを握ると見る。ただ、サービス型ビジネスというと、顧客を呼び込むプラットフォームビジネスのような印象が強いが、それとともに従来のSI事業の長所である「顧客の良き相談相手となる」ところも大きなカギになるのではないか。
というのは、NECの国内事業における最大の強みは、グループ会社も含めて多くの顧客とダイレクトにつながっていることだと考えるからだ。顧客から相談相手として信頼されているIT企業は、どんなテクノロジーベンダーやプラットフォーマーよりも強い。なぜならば、顧客に信頼されていれば、テクノロジーやプラットフォームの選択についても相談される立場にいるからだ。NECは改めてそうした存在であることを再認識し、その立場を不動のものにするべく、自らを磨き上げていくべきだと筆者は考える。
そのためには、営業マンを単なるご用聞きではなく、ビジネスコンサルタントまでは行かなくとも、ビジネスアドバイザーとして育成する必要がある。問題はITの話ではない。そうすれば、営業マンのモチベーションも上がるはずだ。
NECに限らず、日本のIT企業にとってはかねて取り組んできたことかもしれないが、市場が大きく変化しつつある今だからこそ、ますます重要な取り組みだと考えるが、いかがだろうか。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- ITは進化し続ける、人間はどう進化できるか――NEC・新野社長
「共創」によって、企業のデジタル変革を進めるNEC。全てのものがつながり、AIの普及によって「進化し続けるIT」が当たり前になりつつある今、「人間が進化できるか」が今後の課題になると新野社長は考える。 - マイナンバーをセキュアに収集・管理――さわやか信用金庫、NECのマイナンバー収集ソリューションを導入
さわやか信用金庫が、外訪端末のカメラで撮影し、マイナンバーなどの顧客情報を迅速かつ確実に収集するNECのソリューションを導入。提案時間を捻出するなど、顧客サービスの向上を図る。 - PCのサポート窓口にAI活用、24時間対応へ NECがLINEチャットで
NECPCが、NECの個人向けPCのサポート窓口に、AIを使ったLINEチャットを導入。手軽に利用できる24時間対応のカスタマーサービスを提供することで、顧客満足度の向上を目指す。 - デジタルトランスフォーメーションとは何か NECの製品体系が示す、その正体
NECがデジタルトランスフォーメーション(DX)事業を体系化した。DXとは具体的に何なのかと問われることがまだまだ少なくない中で、同社によるその体系化で正体を探った。 - ポイントは「シミュレーションとAIの融合」 NECが示す「スパコン」の進化の方向性
NECがスーパーコンピュータの新製品を発表した。同社が示す「スパコン」の進化を利用領域から見ると、「シミュレーションとAIの融合」がキーポイントだという。いったい、どういうことか。 - 遺失物の効率的な管理を支援する「NEC 遺失物管理ソリューション」の最新版 法改正にも対応
NECソリューションイノベータは、落し物や忘れ物(遺失物)の管理を支援する「NEC 遺失物管理ソリューション」の最新版を発表。既存システムとの連携やバーコードによる遺失物管理など、作業効率を向上する機能追加や法改正への対応が行われた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.