「クラウド」から「データ利活用」へ、NTT Comが戦略キーワードを変えた理由:Weekly Memo(1/2 ページ)
NTTコミュニケーションズが事業戦略のキーワードを、これまでの「クラウド」から「データ利活用」に変えた。果たして、そこにはどんな思惑があるのか。
データ利活用を支えるケイパビリティの強化・拡充へ
「デジタルトランスフォーメーション(DX)をお客さまとともに実現する信頼されるパートナーを目指し、2018年度はデータ利活用を支えるケイパビリティの強化・拡充に注力したい」――。NTTコミュニケーションズ(NTT Com)の庄司哲也社長は、同社が4月10日に開いた2018年度(2018年4月〜2019年3月)のサービス事業戦略についての記者説明会でこう強調した。とりわけ、「データ利活用を支えるケイパビリティの強化・拡充」が戦略のテーマである。
このテーマを掲げた背景として庄司氏は、スマートデバイスやIoTの発達によって、さまざまなところからデジタルデータを取得できるようになったことや、コンピュータの処理能力向上やAI(人工知能)などの発達によって、デジタルデータの利活用シーンが拡大したこと、データの利活用に関する理解の向上や法制度が整備されてきたことなどを挙げ、「いよいよ本格的なデータ利活用の時代が訪れつつある」との認識を示した。
そのうえで同氏は、データ利活用に向けた取り組みについて、さまざまなIoTデバイスが生成するデータを蓄積場所まで運ぶ「収集」、収集したデータを安全に保管して分析しやすいように加工する「蓄積」、蓄積されたさまざまなデータを組み合せて新たな知見を生み出す「分析」といった3つの観点から、それぞれのポイントを説明した。
まず、収集については「IoTデバイスの種類や位置に応じた適切なセキュリティ対策」や「大容量データの効率的な転送」がポイントになると指摘。セキュリティについては、デバイスやネットワーク、OT(制御技術)・IT環境といったデータ収集プロセスごとの対策を講じる一方、大容量データの転送については海底ケーブルの拡充を図っているという。
蓄積については「さまざまなロケーションでのデータ蓄積」や「データの機密性・匿名性の確保」がポイントになると指摘。データ蓄積については、データセンターのカバレッジ拡大として、今後も図1のように6カ所の新設を計画しており、これらを合わせて提供するデータセンターは20以上の国や地域をカバーし、サーバルーム面積は40万平方メートル以上になるという。
また、南アフリカのクラウドサービス事業者であるDimension Dataを買収したことにより、クラウドサービスは15の国や地域、35のデータセンターから提供できる形になった。データの機密性と匿名性の確保についても「秘密分散」や「秘密計算」などの最新技術を提供していく構えだ。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- 銀行のオンプレミス資産をクラウド化――紀陽銀行、Azure移行プロジェクトを開始
紀陽銀行が、FIXER、日本マイクロソフトと連携し、オンプレミスの業務システムを「Microsoft Azure」基盤のクラウドに移行するプロジェクトを開始。Azureのフルマネージドサービス「金融機関向けcloud.config」による24時間365日体制の運用監視も導入する。 - 基幹システムのクラウド化に欠かせない「3つの要件」
企業の基幹ITを支える「エンタープライズクラウド」に求められる要件は何か。日本オラクル幹部が挙げた3つのポイントとは――。 - NTT Comはクラウド市場で“ITジャイアント”に勝てるのか
「“ITジャイアント”といわれるグローバルベンダーと、クラウド事業でしっかりと渡り合っていけるようにしたい」――。そう語ったNTT Comの庄司社長は、強豪ひしめくクラウド市場でどう戦おうとしているのか。 - NTT Comがクラウド戦略を転換 その真意は?
NTTコミュニケーションズがクラウド事業で新たな方向性を打ち出した。競合と真っ向からぶつかるのではなく、通信会社らしく「つなぐ」ことを前面に押し出したものだ。果たしてその真意やいかに――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.