ブロックチェーンは役立たず? それとも世界を変える?:Mostly Harmless(1/2 ページ)
ブロックチェーンには、さまざまな期待が寄せられる一方、一部にはその効果を疑問視する声も挙がっています。果たしてその有用性は? ブロックチェーンを巡る最近の動向を交えて考察します。
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
2016年にブロックチェーンを礼賛する記事を書きました。しかし、実験的なプロジェクトはいろいろと出てくるものの、“世界を変えた”といえるほどの成果はまだ出ていないようです。2018年4月にはこんな記事も出て、風向きが変わってきたのか……とも思っていました。
原文は海外の記事ですが、「ブロックチェーンによる仕組みよりも、信頼・規範・組織からなる既存の仕組みのほうが、根本的に優れている」ということです。
ただ、これに対して私は、「既存の仕組みは確かに優れているかもしれないが、その維持には膨大なコストがかかる。よりコストの低い代替手段があり、問題点を許容できる使い方や運用があるなら、それでもよいのではないか」と思います。「できるものから」ということですね。
データベースの整合性に関する考え方は、NoSQL以降、ACID一辺倒から、BASEでもよい分野はBASEで、という方向に変わっています。ブロックチェーンでも、同じような割り切りは可能ではないでしょうか。
ブロックチェーンの可能性を信じたい
インターネットは情報の流通を自由にし、コストをほぼゼロにすることに成功しました。ブロックチェーンは、信用に基づく価値の交換をほぼコストゼロで実現できるポテンシャルを持っていると、私は考えています。
情報の信頼性ということでいえば、インターネットは報道、放送、出版には及ばないかもしれませんが、情報の取得コスト(と時間)がゼロになるというメリットは、それをしのぐものではないかと思います(もちろん、怪しい情報や偽記事を見極める能力もユーザーには求められるわけですが)。誰かに「管理されていた」情報が自由に流通するようになった、といえます。
ブロックチェーンが目指したのも、「誰かが管理していた価値の流通を自由化する」ということであり、これは「自由」「分散」というインターネットの理念とも共通します。私がブロックチェーンに可能性を感じ、なんとかうまくいってほしいと思っているのは、これが理由です。
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