クラウド時代に“ユーザー企業に選ばれるパートナー”になる方法:Weekly Memo(2/2 ページ)
クラウドベンダーがさまざまな分野で協業するパートナー企業との連携強化を図っている。この機に、ユーザー企業がパートナー企業を選びやすい制度づくりを求めたい。
AWSが示したパートナーエコシステムの理念
こうしたクラウド事業におけるパートナーエコシステムの強化は、Amazon Web Services(AWS)やIBMなど、Microsoftにとっての競合ベンダーも注力している。
その中でも注目されるのが、AWSが進めている「認定パートナー制度」である。この制度は、特定の専門知識やAWSの各サービスに対する専門知識を持つパートナー企業をAWSが認定するものだ。図3がその一例だが、こうしたパートナーの認定は「ユーザーがこれを見て選択しやすいようにする」のが狙いだ。(関連記事)
AWSがパートナーの評価を行うことから、「上から目線」と見る向きもあるが、その評価基準が公明正大であれば、自社に最適なパートナーを選びたいユーザーにとっては非常に役立つ情報である。こうしたユーザーオリエンテッドな姿勢こそ、パートナーエコシステムの理念であるべきだ。
そこで、Microsoftでもそうした取り組みを行うつもりがあるのか、会見の質疑応答で聞いてみたところ、高橋氏は次のように答えた。
「パートナー企業のケイパビリティをユーザーであるお客さまが認識できるように見える化する仕組みは、現時点ではまだできていないが、実は今、鋭意準備を進めており、この9月までにはお客さまにとって分かりやすい情報を提供できるようにするつもりだ」
また、高橋氏とともに会見に臨んだ日本マイクロソフトの細井智パートナー事業本部パートナー技術統括本部長も、「とりわけ新体制になってこの1年間、パートナー企業との協業を深耕しながら、お客さまが当社のクラウドに何を求めておられるか、あらゆる角度から情報を集めて分析し、整理してきた。お客さまにとって役立つ情報を提供することは、実はパートナー企業からも求められているので、最後の詰めの作業に注力したい」と、情報公開間近であることを明らかにした。
Microsoftはどうやら「認定制度」という表現を使わないようだが、いずれにしてもユーザーがクラウド化に向けて自社にマッチしたパートナー企業を選びやすいようにする情報提供の仕組みは、AWSもMicrosoftも注力するようだ。特にパブリッククラウドサービスでは両社が市場をけん引する立場にあることから、このユーザーオリエンテッドな仕組みが浸透していけば、クラウドサービスの活用はさらに進むだろう。
さらに、筆者としてはもう一歩、提案しておきたい。それは仕組みをつくるだけでなく、その仕組みをもとにユーザー満足度調査を継続して行ってもらいたいということだ。パートナー企業にとっては評価を受けてばかりのように見えるが、むしろユーザーから直接、確固たる支持を得る大きなチャンスと捉えることができよう。こういうやりとりが続けられるようになると、パートナーエコシステムは少しずつ成熟していくのではないだろうか。
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