構想7年、「Azure Stack」の本格展開でMicrosoftのクラウド戦略はどう変わるのか:Weekly Memo(1/2 ページ)
Microsoftが、自社パブリッククラウドの機能をオンプレミスで利用できる「Azure Stack」を日本で本格展開し始めた。実は、この新製品が実現するまでには、およそ7年にわたるシナリオがある。本コラムの記録を基にそれを解き明かしたい。
日本で本格展開し始めた「Azure Stack」の特徴
「まさしくクラウドとオンプレミスの“いいとこ取り”をした製品だ」――。日本マイクロソフトが先頃開いた「Microsoft Azure Stackに関する日本での取り組み」と題した記者説明会で、同社の浅野智 業務執行役員クラウド&エンタープライズビジネス本部長はこう力を込めた。
Azure Stackは、Microsoftのパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」の機能をユーザーがオンプレミスで利用できるようにしたハイブリッドクラウド対応の基盤ソフトウェアである。
具体的には、AzureのIaaSおよびPaaSの機能、ネットワークコントローラやストレージコントローラ、ロードバランスなどのサービス群をオンプレミス環境で利用できる形だ。MicrosoftではAzure StackをAzureの「拡張機能」と位置付けている。(図1)
主な特徴は4つ。1つ目は「共通のID」。Microsoftの「Active Directory」とシームレスに連携してシングルサインオンが可能だ。2つ目は「統合された管理とセキュリティ」。これにより、インフラ全体を可視化できるようになる。3つ目は「一貫性のあるデータプラットフォーム」。データベースをシームレスに連携可能だ。
そして、4つ目として浅野氏が一段と声高に語ったのが「統合された開発とDevOps」。クラウドとオンプレミスによる統合開発環境でアプリケーションを構築できることを挙げ、「これはハイパーコンバージドシステムだとできない業だ」と強調した。
Azure Stack対応ハードウェアは、デルおよびEMCジャパン、日本ヒューレット・パッカード、レノボ・ジャパンが9月から出荷しており、シスコシステムズ、アバナード、ファーウェイ・テクノロジーズ・ジャパンも順次提供していく予定だ。(図2)
なお、Azure Stackのユースケースや対応パートナーであるソフトウェアベンダー(ISV)15社、マネージドプロバイダー4社、システムインテグレータ21社のリストについては、浅野氏によるMicrosoftの公式ブログをご覧いただきたい。
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