「あなたは上司、僕は部下」の線引きが組織をダメにする!?――理想の組織をつくる3つのポイント:榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(2/2 ページ)
「上司だからxxできて当然」「部下だからxxして当然」――そんな組織をダメにする利己主義は、「上司と部下」という関係がもたらす弊害かもしれません。仕事上のパートナー同士、互いの力を最大限に引き出し、気持ちよく働ける組織の要とは?
補完関係をつくり出す3つのポイント
補完関係をつくり出すためには3つのことを気を付けるといい。
#目的の共通化
#上下関係でなく、補完関係という理解(上司が弱さをさらけ出す)
#部下の意見をバンバン採用する
ここからは主に上司目線で書いてみる。
1. 目的を共通化する
「部下らしく、上司らしく」なんて意味がない。「チームがどんな状態になればいいのか」がポイントだ。その状態をつくれるなら、上司も部下も関係ない。それが組織の存在目的になるはずで、全員が目的を強く意識できていれば、自然とその状態がつくれるように動くはずだ。
よくある勘違いは、組織としての目標や価値の出し方を全く理解せず、「個人の仕事だけ果たせばよい」と考えるケースだ。個人のことだけ考えると、途端に、「あなたは上司、私は部下」のパラダイムになる。
例えば、ケンブリッジのバックオフィスチームの目的は、「コンサルが煩わしいことから解放されて、安心して顧客へのサービスに集中できる状態をつくること」が共通の目的になる。これが果たせるなら、誰が何をやっても自由。逆にこれが果たせないなら、果たせるように全員が必死に動く必要がある。
2. 強みを持ち寄って戦うチームだと理解する
これを成り立たせるには、上司が弱さをさらけ出すといい。上司が“上司らしく”振る舞うとダメなのだ。万能の賢者のように振る舞うと、部下たちは途端にモノを言わなくなる。“チーム感”がゼロになる。
そうではなく、上司は自分の弱いところを隠さず積極的にさらす方がよい。部下に助けを求める姿勢が大事だ。そして部下から学ぶ姿勢、部下の意見を求める姿勢を見せなければならない。
要するに「上下」ではなく、対等な立場の人間として接することが大事、ということだ。
3. 徹底的に部下の意見を採用する
「君が上司だったらどうする?」「今、何が足りない?」「具体的にどうしたらいい?」と聞く。そして徹底的に部下の意見を採用する。
こうなると、部下は文句が言えなくなってくる。被害者意識を変えて、当事者意識を持ってもらうのだ。
この3つがうまくできると、「言われたことだけをやる組織」から、「共通の目的のためにエンパワーされた集団」に変わる。いや、変わるきっかけが「つかみやすくなる」くらいかもしれない。
それでも、こういう考え方ができないと、いつまでたっても「上の命令に従うだけの組織」から抜け出せない。いつまでたっても「自律的に考えて行動できる人材」は育たないと思うのだ。
上司と部下の関係を完全に取っ払わなくてもいい。部下が自律性を保ってくれればいいのだ。上司が独善的にならなければよいのだ。
著者プロフィール:榊巻亮
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
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