JBSはなぜ、ホンダのデジタル革新プロジェクトで信頼を勝ち取れたのか――SIer社長が得た教訓:Weekly Memo(2/2 ページ)
ホンダが取り組むデジタル革新を、SIerがMicrosoftのクラウドを活用して支援 ――。そんな興味深い事例の話を聞く機会があった。プロジェクトからSIer社長が得た教訓とは。
クラウド活用が有効なシェアリングサービス
牧田氏がEveryGOの使い方について紹介した後、ホンダ日本本部営業企画部モビリティサービス推進課シェアリング事業グループの横山浩紀 技術主任がビデオで登場し、次のように語った。
「EveryGOは当社の最新モデルの車の運転を気軽に体験していただくことによって、車に乗る楽しさを感じていただき、そこから商用ニーズにつなげていきたいと考えている」
また、Microsoft Azureを採用した理由については、「EveryGOを支えるIT基盤として、迅速かつ的確な情報管理が行えるとともに、市場の変化に柔軟に対応可能な修正機能、そして高い利便性といった点で、Azureならばリスクを最小限に抑えられると判断した」と述べた。
Microsoft Azureについては牧田氏も、「EveryGOを実現したプロジェクト成功のカギは、Azureを活用することにより、6カ月の短期間でアプリケーションを開発できたことや柔軟性を確保できたことにある」と評価のポイントを語った。
さらに同氏はEveryGOの将来像についても、「私たちとしては、Azureが装備する人工知能(AI)技術を活用した売上予測やチャットbot、さまざまなモバイルアプリの開発、そしてコネクテッドカーとの連携へと大きく広げていきたい」との考えを示した。(図3)
筆者がこの事例で興味深く感じた点は3つある。1つ目は、ホンダが展開しているEveryGOの行方だ。横山氏の話では最新モデルの車の販売・マーケティング活動としてスタートしたようだが、シェアリングサービス推進への布石でもあるだろう。そのビジネスモデルをどう描いているのか。今後の取り組みに注目しておきたいところだ。
2つ目は、そうしたシェアリングサービスへのクラウド活用の有効性だ。日本マイクロソフトのイベントでの話なので、Azureが前面に出ているのは当然としても、デジタル革新へ向けた新サービスを支えるIT基盤はクラウド、というのを印象づけた事例である。
そして3つ目は、こうしたケースにおけるSIerの役割だ。横山氏はJBSについて、「EveryGOのシステム構築を支援していただいた中で、当社の業務プロセスにも深く入り込んでいただき、プロジェクトを迅速かつ的確に進めることができた。今後も信頼できるパートナーとしてご協力いただきたい」と話した。
牧田氏はこれを受け、「私どもSIerはこれまで、お客さまのシステムを構築することが仕事だと考えてきた。しかし、今回のプロジェクトの教訓として、これからのデジタル革新への取り組みは、お客さまと一緒になって新しいサービスを創出していくビジネスパートナーでなければならないと強く感じた。今後、そう肝に銘じてまい進していきたい」と決意のほどを語った。(図4)
SIerはビジネスパートナーであれ――。牧田氏のこの言葉を今回のメッセージとしたい。
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